研究課題
本研究では、ハニカムネットワークを持つ遷移金属ニクタイド超伝導体において、カイラルd波超伝導状態の探索と新奇物性の開拓を進めている。今年度は、(1) ハニカムネットワークを持つ遷移金属ニクタイド超伝導体の単結晶育成と評価を行い、(2) ミュオンスピン回転/緩和実験によるカイラルd波超伝導状態の検証を開始した。(1) ハニカムネットワークを持つ遷移金属ニクタイド超伝導体の単結晶育成と評価:高温で原料を融かした後に徐冷し、単結晶試料を育成した。粉末X線回折で単相の試料であることを確認し、単結晶X線回折で結晶の方位を決定した。磁化の温度依存性を測定して超伝導転移温度を調べ、さらに、バルクの超伝導体であることを確認した。(2) ミュオンスピン回転/緩和実験によるカイラルd波超伝導状態の検証:結晶方位を揃えて並べた上記単結晶試料を用い、J-PARCにおいてミュオンスピン回転/緩和実験を行った。カイラルd波超伝導の電子対は、微弱な自発磁場を発生する。対象とする超伝導体では、その自発磁場がc軸に平行な方向を向くと予想される。この場合、ミュオンスピン偏極度の緩和が、単結晶試料のc軸方向をミュオン束のスピン方向に対して90度傾けると最も速くなり、一方、両者を平行にすると最も遅くなる。本研究では、超伝導転移温度以下において、ミュオンスピン偏極度の緩和過程の異方性を調べることで、電子対由来の自発磁場を実証することを目的としている。今年度は、単結晶試料のc軸方向をミュオン束のスピン方向と平行にした配置でミュオンスピン回転/緩和実験を行い、予想と矛盾しない結果を得た。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、良質な単結晶試料を育成し、方位を決め、ミュオンスピン回転/緩和実験を開始することができたため。
単結晶試料の方向を90度変えてミュオンスピン回転/緩和実験を行い、ミュオンスピン偏極度の緩和の異方性を調べる。様々な系で実験を行い、得た知見の普遍性を検証する。
(理由) 物品費については、今年度分の単結晶試料育成が予想以上に順調に進んだため。旅費については、学会が現地開催中止になったため。(使用計画) 新たな試料合成と物性測定の消耗品費に充当する。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 5件、 招待講演 3件)
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