研究課題
ハニカム構造を持つ遷移金属ニクタイド超伝導体の単結晶を育成してミュオンスピン回転/緩和実験を行い、超伝導状態においてミュオンスピン緩和率の増大を観測した。この結果は、超伝導状態において自発磁場が発生していることを示唆する。そのミュオンスピン緩和率の増大は、不純物をドープすることによって消失した。これらの結果は、従来型の超伝導状態では説明することができない。ハニカムネットワークではカイラル超伝導の発現が理論的に予測されている。カイラル超伝導の電子対は自発磁場を発生する。現在、詳細な解析を進めながら、この系の超伝導電子対に関する検討を慎重に行っている。本研究を進めていくうちに、カイラル超伝導に関する普遍的な知見を得るには、ハニカム構造と関連する他の構造を有する超伝導体と比較しながら系統的に実験を進めることが必要であることが分かってきた。そこで、本研究では、対称性から、ハニカムネットワークと同様にカイラル超伝導の発現を期待することができる三角形ネットワークとカゴメネットワークを有する超伝導体の探索を進めた。今年度は、三角形ネットワークを持つ新超伝導体の開発を行い、その結果、2種類の新超伝導体を発見し報告することができた。昨年度に、カゴメネットワークを持つ新超伝導体を2つ報告している。したがって、本研究により、新奇超伝導状態を探索するための舞台として、三角形、ハニカム、カゴメネットワークを持つ超伝導体が揃った。今後、これらの良質な単結晶を育成し、ミュオンスピン回転/緩和実験を行い、カイラル超伝導について系統的かつ普遍的な知見を得る方向へと研究を発展させていくつもりである。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
Journal of the Physical Society of Japan
巻: 91 ページ: 034703 (1-6)
10.7566/JPSJ.91.034703
巻: 90 ページ: 063706 (1-4)
10.7566/JPSJ.90.063706
巻: 90 ページ: 114705 (1-5)
10.7566/JPSJ.90.114705
http://qm.phys.sci.osaka-u.ac.jp