研究課題
銅酸化物高温超伝導体はd波の超伝導対称性を有するため、(110)界面に分散を持たないゼロエネルギー・アンドレーエフ束縛状態の存在が理論的に予測されている。実験的にも、アンドレーエフ束縛状態の存在はトンネル分光により広く実証されてきた。しかしながら、原理的に直接観測出来るはずの角度分解光電子分光(ARPES)を用いたアンドレーエフ束縛状態の報告例は存在しない。このことは、ARPES実験に必要な平坦な試料表面の作製が、銅酸化物高温超伝導体の(110)面では困難であったことに起因すると推測される。そこで本研究では「試料の微細加工」・「試料のへき開・破砕の工夫」・「顕微ARPES」を組み合わせることで「非容易へき開面でのARPES手法」を確立し、銅酸化物高温超伝導体の(110)面に現れるアンドレーエフ束縛状態を直接的に観測することを目的とした。本研究では、入射光をマイクロ集光したマイクロARPESを用いて、細い棒状に成形したLa系銅酸化物高温超伝導体LSCOの(100)面ならびに(110)面の電子状態の測定を行った。マイクロビームの利用により、非容易へき開面である(100)面・(110)面においても、ARPES実験を行うことに成功し、バンド分散やフェルミ面の観測に成功した。特に(110)面では、フェルミ準位近傍に局在する電子状態の観測に成功した。また、長時間を必要とする顕微ARPES計測の高効率化に向けて、機械学習を用いた顕微データ解析手法の開発を行った。教師なし学習の一種であるKmeans法ならびにFuzzy-c-means法を用いて、顕微ARPES空間データのスペクトル特徴を抽出し、顕微ARPES計測の効率化・高速化に成功した。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 5件、 招待講演 7件)
Synchrotron Radiation News
巻: 35 ページ: 3~8
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Journal of Physics: Conference Series
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