研究実績の概要 |
分子線エピタキシー法を用いてSmB6/CaB6/SeB6超格子の育成を行った.SmB6, CaB6, SrB6はいずれもCaB6型の立方晶の結晶構造を持つ.格子定数も近いため,エピタキシャル成長に重要な格子のマッチングも良好と期待される.SmB6は近藤トポロジカル絶縁体であり,グローバルな空間反転対称性を破ることによりワイル半金属状態を実現できると考えられる.これに対してSrB6は通常の絶縁体,CaB6は金属であり,SmB6, SrB6, CaB6の3者を積層させることでグローバルな空間反転対称性を破ることができる.Ca, Sr, Sm, Bはいずれも独立なクヌードセンセルからの過熱蒸着を行い,安定した蒸着を実現した.それぞれの元素は化学量論比通り1:6になるように調整している.CaB6層,SrB6層, SmB6層が同じ厚みで3重に積層した超格子構造を6回繰り返した人工超格子を作製した.基板にはSi(100)面を用いた.Si基板は熱酸化膜が無いものを用い,更に自然酸化膜を除去するためにフッ酸によるエッチング処理を行った. Si基板の[110]方向とSmB6/CaB6/SeB6超格子の[100]が配向したエピタキシャル成長が期待できる.蒸着時の基板温度は1000℃まで加熱した.この超格子のX線反射率測定から超格子構造が実現できていることが確認できた.低温までの電気抵抗率測定から,降温と共に絶縁体的に上昇していく傾向が確認された.
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