研究課題
本研究では、強相関電子系において興味深いテーマである量子相転移現象をはじめとした、高圧力下で出現する新奇な物性現象の解明へ繋がる新たな知見の獲得を中性子実験の実施により実現することを目指している。具体的には、技術的に困難である多重極限環境下の単結晶中性子回折実験技術の確立と、これを用いた対象物質の高圧下での磁気的性質(磁気構造)に関する情報を得ることを目的としている。これまでに、我々が独自に開発してきた単結晶サファイアアンビルと超硬合金(WC)アンビルを組み合わせた対向ハイブリッドアンビル方式の高圧力発生技術を遍歴強磁性体LaCrGe3に適用し、J-PARC MLFのSENJU(BL18)において高圧下中性子回折実験を実施し、量子臨界近傍での磁気反射の探索を行なった。加えて海外の原子炉中性子源においても、新規に開発した非常に小型軽量のピストンシリンダーセルを導入し、Shastry-Sutherland模型物質Sr2Cu(BO3)2の高圧・強磁場・極低温同時条件下での磁気励起測定を海外共同研究として実施した。最終年度においては、これらを含む研究成果や技術開発結果のまとめについて、中性子散乱や試料環境に関する国際会議(ICNS2022、ISSE2022)等に参加し招待講演等を行なった。また実験においては本高圧力発生技術を利用した研究の推進のために、SENJUユーザーとの共同研究(一般課題)として、超伝導体EuRb1144化合物について9GPa以上の高圧力下での単結晶中性子回折実験を実施した。
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件)
Phys. Rev. B
巻: 105 ページ: 144410 (6p)
10.1103/PhysRevB.105.144410