研究課題
本研究では,異なる細胞骨格フィラメントの性質の違いが細胞内で生じる細胞骨格の特有な相分離と融合に関与するのではないかとの仮説に基づき,筋細胞由来のデスミン中間径フィラメントとアクチンフィラメントとの間の相互作用様式を調査した.令和元年度・2年度において,細胞サイズの油中水滴内で,デスミン中間径フィラメントの成長が水滴を大きく変形させること,およびデスミンの形態に依存してアクチンフィラメントと共局在あるいは相分離することを世界に先駆けて明らかにした.成長過程にあるデスミンフィラメントがアクチンフィラメントと相互作用し複合ネットワークを形成するのに対して,成熟したフィラメントでは分離する傾向がみられた.一方でこのネットワーク形態はアクチンの成長過程には依存しなかった.これにより仮説に対するひとつの答えを提示し,本研究目的は達成された.令和3年度では,ネットワーク形成機序の詳細を調べるために,単一フィラメントレベルの中間径フィラメントを観察する方法を検討した.蛍光標識法を改善した上でデスミンのフィラメント形成の因子であるイオン強度と二価カチオンの効果を網羅的に調査した.マグネシウムやカルシウムイオンは,中間径フィラメントの伸長を促進した.それと同時に,塩化カリウムの濃度増加は,フィラメント間の集合によるネットワーク形成も促進した.これらの結果よりシングルフィラメントの成長条件と蛍光顕微鏡での可視化に適した条件を確立した.これらの知見により,今後,単一フィラメントレベルでの中間径フィラメントとアクチンフィラメントの力学的な相互作用の直接的な観察が可能となり,ヘテロな細胞骨格群から生じる組織化機序の解明への新たな展開が期待できる.
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Macromolecular Bioscience
巻: 1 ページ: 2100471~2100471
10.1002/mabi.202100471