研究実績の概要 |
本研究は細胞極性による細胞集団運動でのパターン形成について研究を実施する. 今年度はその実施の準備として形状の等方的な場合での細胞集団がどのような物か基本的な情報収集をシミュレーションを用いて行った. 非等方的な細胞形状な場合と比べ複雑なパターン形成は無くランダムになると考えられたが, それほど単純ではないことが分かってきた. 1. 細胞形状が等方的な場合はself-propelled rodと同じクラスに属し, 通常運動の秩序形成は起きずパターン形成などは起きないと推測されたが, 実際には運動秩序形成は起きる. 2. その秩序形成は細胞の駆動極性によるものである. 駆動力と密度により秩序-非秩序転移が起きる. 3. 密度の大きい場合細胞は格子パターンを作る. 駆動力が大きくなるとdisclinationを形成し大域的な格子パターンは崩れ流体的に振る舞う. 4. 現状では原因は不明であるが, 非常に高密度の細胞では秩序化に必要な駆動力が以上に下がる. などの知見が得られた. これらの結果は交通流シンポジウムのプロシーディングで一部公表したほか, JPSJでの論文公表準備を進めている. またHomophilic, heterophilic接着が極性を持つ細胞集団についても研究を進めたが, この場合はheterophilicの強さにより三種類の相が現れるという結果が得られた. 現状で境界条件に強く依存している現象のため, 今後はより適切に境界条件の依存性を減らす系をデザインし検証を行ってゆく予定である. またこの系に関してはニューロンの集団運動理解への応用を目指し実験グループや他の理論研究グループと連携を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は細胞の形状異方性を取り込んだ場合の集団運動でのパターン形成のシミュレーションに取り組み, その基本的性質を明らかにする. 前年度においてそれに必要なシミュレーターの開発も終了しており, 問題なく研究実施できる見込みである. ただし, 現状でコロナ蔓延の影響が出て, 研究設備の利用制限に対処するため様々な遠隔作業用の対応や, 当初予定した研究打ち合わせ等の方法変更が必要である. そのため本年度の予算でその対応のための設備購入を行う予定である.
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