研究実績の概要 |
昨年より開始した細胞集団の集団運動の表面張力依存性の研究を継続して行った. 特に細胞がそれほど相対位置を変えない液体状態に的を絞り集団運動でのパターン形成を調べた. これは昨年度の結果から予想できたことは固体状態での集団運動と液体状態のそれでは大きく安定性が異なり, その相転移点付近で何か新規の現象が観測されるのではないかと期待していのものだった. 今年度の前半の研究はこの課題を拡張したCellular Potts模型に基づいて行った. その結果, この液体状態への遷移による集団運動状態の不安定化での新規現象については大きな変化はないことが判ってきた. そして液体状態についても固体状態とそれほど集団運動としてだけ見れば結果が変わらず, 維持時間が定量的に影響を受けるとうものだった. これは昨年度の計算に基づく予想とは異なっている. この結果の原因を調べるため細胞の自然な体積や駆動力を変えながら状態が変化しない条件を探った. そして細胞の体積に対する拘束条件が状態を安定させることが判ってきた. つまり系を細胞が埋め尽くした状況で体積が全体として一定という拘束条件の下でこれまで計算している. そのため, 表面張力を変えても細胞体積の拘束に阻まれ表面張力による液体/固体状態の運動への影響が抑制されている可能性がわかった. そこで年度後半に細胞で埋め尽くした状態ではなく溶媒中に高密度ながら分散した細胞系を考え細胞体積が緩和できる状況を作り研究した. その結果固体状態では液体状態では見られない新規のReentrant遷移が現れ集団運動を抑制することが判ってきた.
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