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2023 年度 実施状況報告書

回転分子モーター蛋白質の駆動力伝達部位の弾性が回転速度・トルクに与える影響

研究課題

研究課題/領域番号 19K03776
研究機関大阪医科薬科大学

研究代表者

古池 晶  大阪医科薬科大学, 医学部, 准教授 (60392875)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2025-03-31
キーワードATP合成酵素 / 分子機械 / 分子モーター / 1分子観察 / 1分子生理学 / タンパク質の弾性
研究実績の概要

ATP 合成酵素(FoF1)は,無機リン酸(Pi)とADPから生物のエネルギー源ATPの合成を担うタンパク質複合体である。膜中に埋まったFoが,膜内外に生じた電気化学ポテンシャルを駆動力として回転軸を回転させ,F1の持つATP活性部位(3つのβサブユニット)で,1回転で3つのATPが合成される。昨年度までに,回転軸の中間領域を構成する2本のαヘリックスの両方ともに自由回転領域を導入した「ドライブシャフトの弾性がゼロの変異体N」と,片方にだけに導入した「ドライブシャフトの弾性を弱めた変異体A」という回転軸の弾性率を変えた2通りのF1変異体をメインに,それらの回転運動を1分子観察で調べてきた。
本年度は,負荷(回転に抵抗する力)の有無が,F1変異体の回転運動へ与える影響を調べるために,回転角度のタイムコースの解析を行った。F1は1回転に3回のATP加水分解を行い,その化学エネルギーを駆動力に変換しているので,120度ごとに,ATP加水分解に由来する同様の化学イベント(ATP結合・分解,ADP/Pi解離)が行われる。野生型F1の回転でそれらは,ステップ回転か一時停止に対応して観察され,逆ステップ回転はほとんど見られない。ところが,変異体Nでは負荷が掛かったとき,40度以上の逆ステップ回転(>~10 ms)がしばしば起きていることが分かった。また,無負荷のときは,短時間での繰り返しの逆ステップ回転(<~1 ms)がしばしば起きていることが分かった。回転軸は,回転力だけを伝達するのではなく,異なるATP 活性部位での化学イベントの連動を制御する力の伝達も担っている可能性がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

当初の研究計画では,2つの目標を掲げた。1)不連続な回転軸を導入したF1変異体の作製し,回転軸が担っている「力の分離・伝達」を分離する。こちらの目標については,変異体も作製でき,その1分子観察・解析から新しい知見も得られた。ただし,データ量がやや不足している。2)弾性率を弱めた回転軸を持つF1変異体がATP合成活性を持つかを調べることで,ATP合成可能な ATP駆動性能の基準を決める。こちらも,変異体Aと野生型Foをリポソーム(人工脂質膜)に再構成することができ,定性的ではあるが変異体AでATP合成活性があることを確認できた。しかし,変異体Nを含めその他の変異体ではまだ確認していない。データの質・量ともに不足している状況である。
以上の観点から,現在までの進捗状況を遅れていると自己評価し,期間延長を申請した。

今後の研究の推進方策

本研究計画の遅れは,研究計画自体に問題が生じたわけではなく,研究時間の確保が困難な状況が続いたことにある。次年度は,主に変異体Nと野生型Foの複合体の作製・リポソームへの再構成,およびそのATP合成活性の有無の確認を行い,回転軸の弾性が,ATP合成酵素におけるトルクの発生・伝達や回転速度の制御にどのような役割を果たすのかを明らかにしていく。

次年度使用額が生じた理由

研究の遂行に遅れがあるとの自己評価をもとに,研究期間延長を申請し承認された。次年度繰越額分の助成金は,これまでの研究計画の遅れに伴い生じた。その助成金は,遅れた研究に対応する経費に使用する予定である。具体的には,生化学実験に必要な試薬・器具の購入,解析に必要な専門書籍の購入,学会発表のための旅費等に充てる。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2024

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] ドライブシャフトの弾性を弱めることが F1-ATPase の触媒反応に与える影響2024

    • 著者名/発表者名
      古池 晶, 牧 泰史, 吉田 秀司
    • 学会等名
      日本物理学会 2024年春季大会

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公開日: 2024-12-25  

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