研究課題/領域番号 |
19K03781
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
齊藤 慎司 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所宇宙環境研究室, 研究員 (60528165)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | プラズマ乱流 / 太陽風 / 粒子シミュレーション / 並列演算 |
研究実績の概要 |
太陽からのプラズマの流れである太陽風乱流中では、粒子間衝突がほとんど起こらず、流体粘性による散逸機構は無視出来ると考えられている。しかしながら、太陽風の「その場」観測から、流体乱流による粘性散逸の特徴とよく似た周波数スペクトルが現れることが知られている。本研究ではプラズマ乱流中の荷電粒子の運動特性がこの原因を担っていると考え、太陽風乱流中に見られる特性について、第一原理プラズマ粒子シミュレーションを用いた計算機実験によって明らかにする。 当該年度においては、名古屋大学のスーパーコンピュータ「FX100」を利用して4000以上の計算コアを並列処理させることによって、大規模粒子シミュレーションの実行を行った。初期解析として、低周波のシェア・アルフェン波動の波数スペクトルの発展について解析したところ、これまで研究を進めてきたホイッスラー乱流の性質とは異なる発展をするという結果が得られた。ホイッスラー乱流の場合は、背景磁場に対して垂直方向に波数スペクトルが伸びていく傾向があるのに対し、今回実施したシェア・アルフェン波動の場合は、比較的等方的な発展をする傾向にあることがわかった。今後、プラズマ粒子のデータも合わせ、詳細解析を実施する。 成果発表としては、10月末に岐阜県土岐市で開催された第29回国際土岐カンファレンスに招待講演として出席し、当該研究に関するこれまでの成果を含めた研究成果発表を行った。また、12月にはアメリカ・サンフランシスコで開催されたAGU国際会議に出席し、上記計算結果の初期結果についてポスター発表を行った。ここでの議論をもとに今後詳細解析を進め、令和2年度中の論文発表を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度中に大規模粒子シミュレーションの計算を名古屋大学のスーパーコンピュータを用いて実行し、必要なデータを解析サーバへ移行し終えた段階となっている。このデータを用いて、令和2年度の前半期で詳細なデータ解析を行う。現在名古屋大学のスーパーコンピュータの更新作業が行われており3ヶ月の間大規模シミュレーション計算が出来ない状況にあるが、この期間中にデータ解析や論文執筆に注力することが出来るため、進捗状況に大きな遅延は起こらないと考えている。このことより研究進捗の状況はおおむね順調であると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度中に得られた大規模データを用いて詳細なデータ解析を行う。これによりプラズマ乱流中で発生している物理過程について理解し、令和2年度前半期を目処に論文の執筆を行う。令和2年度後半期以降は、スーパーコンピュータの更新作業が終わっているため、前述の詳細データ解析の結果を踏まえつつパラメータ検討を行い、複数の大規模シミュレーションの計算を実行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度12月に支出した海外旅費が当初想定していた額と違いがあったため、次年度使用額が生じている。これについては、次年度のスーパーコンピュータの使用料もしくは論文投稿料の一部として利用することを計画している。
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