本研究ではプラズマ中の荷電粒子の振る舞いが重要であると考えられる運動論的乱流の生成について、第一原理プラズマ粒子シミュレーションを用いた計算機実験を行った。 令和4年度においては、これまでの計算機実験によって得られたデータの解析を進めた。非圧縮モードを初期条件として開始されたアルフェン乱流の時間発展について、磁場の圧縮成分とプラズマ密度との相関に着目し解析したところ、正の相関が支配的になることがわかった。これは、圧縮性を持った磁気音波/ホイッスラー(MSW)のモードが優位に生成されたことを意味している。また、励起されたMSWが高周波側へカスケードされ、運動論的乱流域でMSW乱流が支配的になっていることが明らかになった。さらに、このプラズマ乱流発展中に、電子はほぼ統計的な散乱が支配的である一方で、イオンは非熱的な加速を受けていることも確認された。これはこれまでMSW乱流の数値実験で得られた結果と矛盾しない。 これらの成果については、令和4年度末にSTEシミュレーション研究会で口頭発表したとともに、国際的な学術論文への投稿に向けた準備がほぼ終了する段階となっている。また令和5年5月に実施される日本地球惑星科学連合2023年大会においてポスター発表を実施する予定である。 研究期間全体を通じ、名古屋大学のスーパーコンピュータを用いたプラズマ粒子シミュレーションによる計算機実験を行い、太陽風プラズマ中で支配的であると考えられている非圧縮・低周波のアルフェン乱流がどのように運動論的なプラズマ乱流を生成するのかについて研究成果が得られた。圧縮性を持った運動論乱流、特にホイッスラー乱流の重要性について、国際会議や国内学会等で成果発表を行うことができた。プラズマβ依存性についても計算機実験を実施しており、得られたデータの詳細を今後詳しく解析することによって、さらなる成果の創出を目指す。
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