本年度の研究では、イオンビームとレーザービームの合流によって光吸収励起したイオンからの蛍光を測定することを目指した。昨年度の研究では、トラップに蓄積したナフタレンおよびベンゼンイオンビームとレーザービームを交差させることでそれぞれのイオンの光吸収励起を確認できた。しかし、高いバックグラウンドが原因で、励起イオンからの蛍光を観測することができなかった。そこで本年度は、バックグラウンドの元である迷光や散乱光の発生源を最初に調べた。その結果、大きな発生源が、レーザービームがトラップの石英窓へ入出射する際の窓の発光であることがわかった。さらに、窓の位置が光検出系に近づくほどバックグランドが増加すること、およびレーザービームの通路となる真空ダクトの内面が鏡面磨きされている場合にバックグラウンドが増加することがわかった。この原因は、光の発散成分が光検出部分により到達しやすくなるためである。 次に、このバックグラウンドを低減させるための装置改良を試みた。一つは、光検出部とレーザーの入出射窓の距離を約10cmから80㎝に延長した。また、この延長部の真空ダクトの内壁を鏡面磨きを施さない内壁にした。さらに、入射窓直前にホールスリットを新たに設置し、コリメート済みのレーザービームを再度コリメートすることで、レーザービーム固有の発散成分を押さえることにした。これらの改良によって、バックグラウンドを1/10に低減させることができた。 現在、最終目標としている、改良したバックグラウンド条件の下での蛍光検出の実験が進行中である。
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