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2020 年度 実施状況報告書

重水素負イオン源における同位体効果の物理メカニズムの理論的解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K03783
研究機関鳴門教育大学

研究代表者

宮本 賢治  鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (00532996)

研究分担者 畑山 明聖  慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 名誉教授 (10245607)
星野 一生  慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (50513222)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードプラズマ / 核融合 / 加速器 / 重水素 / 負イオン源 / 数値シミュレーション / PIC法 / モンテカルロ法
研究実績の概要

本研究では、実機の核融合用負イオン源や、次世代のがん治療法であるホウ素中性子捕捉療法等で用いられる医療用加速器での重水素負イオン源について、運動論的粒子モデルに基づく大規模並列計算の数値シミュレーションにより、以下に挙げるような、同位体効果と呼ばれる、水素放電プラズマの場合と異なる物理特性のメカニズムの解明を図る。
1)電子電流が多く、加速部での放電破壊や電極熱負荷をもたらす怖れがある。2)負イオンの引出しや電子抑制のための最適なバイアス電圧が高い。3)Cs効果と呼ばれる、高い負イオン電流密度と電子電流の抑制の持続時間が短い。これらの同位体効果は、実機負イオン源の運転に重大な支障をもたらす可能性があるため、その抑制は喫緊の課題である。
今年度はまず、負イオン源として、重水素実験を行っている核融合科学研究所の研究開発用負イオン源(NIFS-RNIS)にKEIO-MARCコードを適用した。NIFS-RNISは様々なイオン源プラズマ計測器を備えるため、数値解析結果と実験結果を直接比較できる。コードの最適化を行うことで、NIFS-RNISで行われている各フィラメント電流の制御による、ドリフトの影響の抑制を再現できる等の妥当な結果が得られ、計算体系を確立できた。またKEIO-MARCコードによる大規模な数値シミュレーションの支援として、水素と重水素の原子・分子衝突過程を考慮した0次元モデルによる解析も並行して進めた。初期結果として、正イオンの輸送損失時定数に質量の違いが影響し、実験結果に見られるように、ドライバー領域での電子密度は重水素の方が水素よりも3倍程度高いことが示された。さらに、引出領域のモデリング・解析から、負イオンの引出界面の形状は負イオン密度/電子密度の比に依存することが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

新型コロナ感染拡大の影響により、研究分担者側で、遠隔操作により、プログラミング等の作業ができるような環境整備を行う必要性が生じた。そのために今年度当初は、少し時間を要した。また、核融合科学研究所の研究開発用負イオン源をKEIO-MARCコードに適用する際に、計算結果の妥当性を確認するために、水素での実験結果との比較・検討に時間を要した。この確認の過程で、従来のコードにバグがあることを発見し、この修正を行った。以上により、今年度は、重水素の衝突断面積を用いたモデリング・解析には至らなかった。

今後の研究の推進方策

前年度に引き続き、慶応大はKEIO-MARCコードで、重水素負イオン源NIFS-RNISのドライバー領域のモデリングを進め、プラズマ中の電子エネルギー分布関数、重水素原子の温度や空間・速度分布等の解析を行う。特に実験結果に見られるように、ドライバー領域における電子密度は、重水素の方が水素よりも3倍ほど高いことが数値シミュレーションでも再現できるかどうか、もし再現できたならば、どのような物理機構によって、重水素の電子密度が高くなるかを明らかにする。その際に令和2年度と同様に、大規模な数値シミュレーションの支援として、0次元モデルによる解析も並行して進める。これによって得られた知見を、KEIO-MARCコードでのモデリング・解析へ反映させる。
また、鳴門教育大はPIC-MCCコードで引出領域をモデリングし、電位構造や負イオン引出界面、負イオン密度や電子密度の空間分布等について解析する。その際に、KEIO-MARCコードの計算結果を上流条件として活用する。令和2年度の研究成果から、負イオン引出界面の形状は負イオン密度/電子密度の比に依存することが示されている。よって、水素と重水素との間で、負イオン引出界面の形状や負イオンビームの光学特性に違いが見られるかどうかについての検討を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

今年度は新型コロナの感染拡大に伴い、研究分担者との研究打合せを出張の代わりにオンラインで行った。また国内・国際学会もオンラインでの開催に変更されたため、旅費を十分に使用できず、次年度使用額が生じた。
新型コロナの感染拡大の状況次第ではあるが、研究分担者との研究打合せや学会発表の際の旅費として、使用する予定である。また、大規模並列シミュレーションの実施に必要な大型計算機の使用料にも使用する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2020

すべて 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Different characteristics of plasma meniscus formation between positive and negative beam extractions2020

    • 著者名/発表者名
      K. Nagaoka, Y. Haba, M. Kisaki, K. Takahashi, A. Ando, J. Slief, R. Nakamoto, H. Nakano, K. Tsumori, K. Ikeda, K. Miyamoto, Y. Fujiwara, S. Masaki, E. Rattanawongnara, M. Osakabe
    • 学会等名
      The 7th International Symposium on Negative Ions, Beams and Sources
    • 国際学会
  • [学会発表] PICシミュレーションによる負イオンビームのエミッタンス特性の研究2020

    • 著者名/発表者名
      宮本賢治、永岡賢一、津守克嘉、畑山明聖、星野一生、林克哉、木崎雅志、中野治久、池田勝則、藤原大、長壁正樹
    • 学会等名
      第37回プラズマ・核融合学会年会
  • [学会発表] NIFS重水素負イオン源における電子輸送の数値解析2020

    • 著者名/発表者名
      加藤凌、佐藤捷、中野治久、柴田崇統、宮本賢治、畑山明聖、星野一生
    • 学会等名
      第37回プラズマ・核融合学会年会
  • [学会発表] 負イオンビーム集束性に関する考察2020

    • 著者名/発表者名
      永岡賢一、波場泰昭、木崎雅志、中本崚也、津守克嘉、中野治久、宮本賢治、高橋和貴、池田勝則、藤原大、長壁正樹
    • 学会等名
      日本物理学会第75回年次大会(2020)

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公開日: 2021-12-27  

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