研究課題/領域番号 |
19K03784
|
研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
大津 康徳 佐賀大学, 理工学部, 教授 (50233169)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | リングホロー磁化放電 / スモラッコウスキー効果 / 負イオン / 非アルカリ金属 / ガス圧力 / 磁界閉じ込め効果 / 静電プローブ |
研究実績の概要 |
核融合プラズマを加熱電流駆動する中性粒子ビーム装置では、低気圧かつ高密度プラズマを有する高出力の負イオン源が必要とされている。そのプラズマ生成方式には、誘導結合型放電方式と熱陰極を用いた直流アーク放電方式があり、精力的に研究が行われている。しかしながら、いくつかの課題が残されている。 本研究では、それらの課題を解決し、新方式のプラズマ発生方式を創成するために、これまでの研究成果で見出したリングホロー磁化放電方式に、スモラッコウスキー効果を混成させることにより、ネオリングホロー磁化放電を確立し、負イオン生成を実現させることを目的とする。 2019年度では、アルミニウムやシリコンウェハなどの非アルカリ金属表面に多数のステップが形成できるかどうかを検討するために、非アルカリ金属表面のスパッタ処理を実施するプラズマ装置の評価を実施した。スパッタ処理に使用するプラズマは、これまでに開発していたリングホロー磁化放電装置である。まず、そのプラズマ装置の安定放電試験を実施し、安定放電を実現できた。その後、プラズマ放電開始電圧の圧力依存性、プラズマ密度や発光の空間分布の計測を静電プローブ法やデジタルカメラによる画像計測により実施した。その結果、ガス圧力によって、磁石による磁界の閉じ込め効果の寄与が異なることを見出した。具体的には、数10Pa以上では、プラズマ生成機構において、リングホロー効果のみが支配的に作用し、磁界閉じ込め効果はほとんど期待されなかった。一方、数Pa程度の圧力領域では、磁界閉じ込め効果が寄与するプラズマ密度分布やプラズマ発光分布の実験結果が観測された。次年度以降に、このプラズマ装置を用いてスパッタ処理を実施する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度では、非アルカリ金属表面に多数ステップを形成できるかどうかを検討することを研究計画目標とした。そこで、アルミニウムやシリコンウェハなどの非アルカリ金属表面をプラズマスパッタ処理を行うことにより多数ステップ化を検討するためには、まず、スパッタ処理に最適なプラズマの実現を目指した。研究実績の概要に記載しているとおり、おおよそ、満足できるプラズマであることをプラズマ計測法などにより確認できたためである。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度では、アルミニウムやシリコンウェハなどの非アルカリ金属表面をスパッタ処理を行えるプラズマ装置が実現できた。 そこで、2020年度では、そのプラズマ装置を用いて、まず、単結晶であるシリコンウェハを用いてスパッタ処理を行い、それを用いて、リングホロー磁化放電にその処理したシリコンウェハを設置し、未処理のシリコンウェハと比較して、プラズマ特性が変化するかどうかを検討する予定である。2021年度では、水素ガスを導入し、多数ステップをもつシリコンウェハを用いて、高密度水素プラズマ生成できるかどうかを評価し、負イオン生成ができるかどうかも計測する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品の購入価格が予定より低い金額の物を購入できたことと、2020年3月に開催予定の学会や国際会議が新型コロナウィルスの影響でキャンセルとなったため、繰り越し金額が発生した。使用計画として、2020年度開催のオンライン学会の参加費や現地開催の学会旅費、論文英語添削料、新たに必要となる実験材料や機器の購入などを計画している。
|