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2023 年度 実施状況報告書

電流機構の異なる磁化プラズマ結合系モデルによる非接触プラズマ径方向動力学の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K03787
研究機関核融合科学研究所

研究代表者

長谷川 裕記  核融合科学研究所, 研究部, 助教 (60390639)

研究分担者 田中 宏彦  名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (60609981)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2025-03-31
キーワード非接触プラズマ / 径方向輸送 / 直線型装置実験 / 粒子シミュレーション / フィードバック不安定性
研究実績の概要

磁場閉じ込め核融合装置の境界領域では磁力線終端部にあるダイバータ板へ至るプラズマの熱流を低減させるために、中性ガスの導入によってプラズマをダイバータ板から離すプラズマ非接触化が提案されている。このときのプラズマを「非接触プラズマ」と呼ぶが、磁場閉じ込め核融合実現のためには、この非接触プラズマによる熱流の制御が必要不可欠である。本課題では、非接触プラズマを電流機構の異なる磁化プラズマ結合系としてとらえた理論モデルを構築し、先進的な数値計算、直線型装置実験との相互検証を重ねることにより、非接触プラズマにおける径方向ダイナミクスの解明をめざしている。令和5年度は、前年度に引き続き、これまで開発を進めてきている3次元静電粒子シミュレーションコードを用いて、初期に径方向の密度勾配のみを与えたプラズマから径方向輸送が生じる過程を再現する大規模計算を実行し、その解析を進めた。終端板がある場合とない場合とを比較することにより、終端板の効果を調べたところ、終端板により長波長揺動の成長が妨げられ、径方向輸送が抑えられたと考えられる傾向が捉えられた。また、本研究では、現象中の粒子のダイナミクスを解析することも重要であるため、同粒子コードに粒子軌道解析のためのルーチンを実装した。そして、同ルーチンを用いた計算により、密度勾配に起因する不安定性により成長した揺動によってイオンが加熱される現象を観測し、その粒子軌道の詳細な解析から、磁場に対して垂直方向に加速されたイオンだけでなく、平行方向に加速されたイオンも観測され、ともに、初期段階での旋回半径が鍵となることが示唆された。今後は、現在進行中である非接触プラズマを再現するための素過程の導入を完了させるとともに、当該コードによる計算、理論モデル、直線型装置実験との相互の比較を通じて、非接触過程が輸送などの諸現象に与えるダイナミクスの解明をめざす。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初計画では、研究の初期に構築した非接触プラズマの理論モデルに基づくシミュレーションコードの開発、実行、並びに、非接触1次元粒子コードの再結合過程計算部分の改良等を進め、その後、3次元静電粒子コードを基盤とする複合コードを開発し、理論モデル、直線型装置実験との比較検証をおこなうこととしていたが、上記研究実績の概要にも示したように、現時点においては、理論・数値研究では3次元静電粒子コードによる大規模シミュレーションの実行、そして、同コードへの素過程導入を進めている。素過程の導入において疑似乱数生成ライブラリに関する問題が生じたこともあり、当初計画からの多少の遅れが見られるが、コード開発環境等も整っているため、当初目的に向けた研究の実施は十分に可能であると考えている。

今後の研究の推進方策

本課題では、研究代表者が中心となって進める理論、および、数値計算に関する研究、そして、研究分担者が中心となり名古屋大学の直線型装置NAGDIS-IIを用いて実施する直線型装置実験に関する研究、この両者が相補的に協同することによって、その物理解明を目指しており、令和6年度は、本年度に引き続き、3次元径方向輸送粒子コードによる解析、疑似乱数生成ルーチンに関する課題を解決したうえでの同コードへの素過程モデルの導入(複合コード開発)を進めるとともに、その計算結果と理論モデル、多次元時空間挙動抽出法による実験観測結果との比較検証などを、順次、進めていく。さらに、成果の発表、とりまとめも行う。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染症の影響により、研究の若干の遅れやその計画の変更、さらに、成果発表、情報収集等に要する経費の大幅な減少が生じたため、次年度使用を要する状況となった。次年度は、研究の進行度に合わせて、計算機外部記憶装置等の物品の調達を検討するとともに、成果発表、情報収集等に要する経費として使用する予定である。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Four-dimensional conditional averaging tomography of rotating plasma ejection from cylindrical detached plasma2024

    • 著者名/発表者名
      Hirohiko Tanaka, Shin Kajita, Hiroki Natsume, and Noriyasu Ohno
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 14 ページ: 9329-1-9329-8

    • DOI

      10.1038/s41598-024-59182-5

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Analysis of plasma particle orbits in boundary layers with the efficient electrostatic particle-in-cell simulation code2023

    • 著者名/発表者名
      Hiroki Hasegawa and Seiji Ishiguro
    • 雑誌名

      Proceedings of 42nd JSST Annual International Conference on Simulation Technology

      巻: 42 ページ: 102-105

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] High heat flux reduction to materials using current filaments2023

    • 著者名/発表者名
      Trang Le, Yasuhiro Suzuki, Hiroki Hasegawa, Toseo Moritaka, and Hiroaki Ohtani
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 13 ページ: 8300-1-8300-9

    • DOI

      10.1038/s41598-023-35109-4

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 境界領域プラズマにおける巨視的構造と微視的ダイナミクス の研究2024

    • 著者名/発表者名
      長谷川裕記, 石黒静児
    • 学会等名
      日本物理学会2024年春季大会
  • [学会発表] Analysis of plasma particle orbits in boundary layers with the efficient electrostatic particle-in-cell simulation code2023

    • 著者名/発表者名
      Hiroki Hasegawa and Seiji Ishiguro
    • 学会等名
      42nd JSST Annual International Conference on Simulation Technology (JSST2023)
    • 国際学会
  • [学会発表] 3次元静電粒子シミュレーションによる境界領域における粒子軌道の解析2023

    • 著者名/発表者名
      長谷川裕記, 石黒静児
    • 学会等名
      プラズマシミュレータシンポジウム2023
  • [学会発表] Effects of End Plates and Kinetic Dynamics on Filamentary Plasma Structure Formations2023

    • 著者名/発表者名
      Hiroki Hasegawa and Seiji Ishiguro
    • 学会等名
      7th Asia-Pacific Conference on Plasma Physics (AAPPS-DPP2023)
    • 国際学会
  • [学会発表] 境界領域プラズマにおけるイオン加熱の3次元粒子シミュレーションによる研究2023

    • 著者名/発表者名
      長谷川裕記, 石黒静児
    • 学会等名
      第40回プラズマ・核融合学会年会
  • [学会発表] 非接触プラズマ回転放出現象の4次元条件付き平均トモグラフィ2023

    • 著者名/発表者名
      田中宏彦, 梶田信, 夏目祥揮, 大野哲靖
    • 学会等名
      第40回プラズマ・核融合学会年会
  • [学会発表] 3次元静電粒子シミュレーションにおける粒子運動の可視化2023

    • 著者名/発表者名
      長谷川裕記, 石黒静児
    • 学会等名
      VR2023研究会兼日本シミュレーション学会核融合・プラズマ及び関連分野の研究に関する可視化研究委員会研究会及び核融合科学研究所可知化センシングユニット第7回ユニットセミナー

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公開日: 2024-12-25  

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