研究課題/領域番号 |
19K03789
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
三枝 幹雄 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (10292476)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 核融合 / 電子サイクロトロン電流駆動 / 大電力ミリ波 / 高速スイッチ / リング共振器 / 反射鏡 / 固有振動 / ピエゾアクチュエータ |
研究実績の概要 |
核融合プラズマにおける電子サイクロトロン電流駆動による局所的電流駆動の効率の向上のためには、プラズマに応じて電磁ビームの軌道を高速で切り替えるスイッチング技術の開発が必要となる。本研究では、大電力ミリ波帯の電磁ビームを、周波数変調を行うことなく数kHzで切り替え可能な高速スイッチの開発を目指す。 本研究グループが開発中のミリ波帯高速スイッチの原理は、リング状コルゲート導波管のマイターベンド部の反射板を高速振動させることで、リング共振器の共振周波数を変化させ、周波数変調することなく出力を高速に切り替える。今年度は、昨年度開発した三角型高速スイッチのリング共振器部に、高反射率のハーフミラーを組み込み、共振のQ値を上げることで切り替え特性の向上を目指した。まず入射角30°におけるサファイアハーフミラーの反射率を、169.5 GHzから170.5 GHzの周波数帯域で測定した。その結果、0.98 mm厚のサファイアハーフミラーでは反射率が91%となり、昨年度の0.96 mm厚の反射率50%と比較して反射率は向上し、周波数依存性も大きく改善された。 次に、小型振動発生機を用いて反射鏡を振動させ、低電力で高速切り替え試験を行ない、300 Hzまでの出力変調を確認した。また、0.98 mm厚のサファイアハーフミラーを高精度で固定できるテフロンサポートを新たに設計・製作した。 最後に、反射鏡の固有振動を利用した切り替え周波数向上を目指し、新たに購入した2個のピエゾアクチュエータおよびピエゾドライバを用いて反射鏡の単体試験を行い、反射鏡の固有振動周波数である1.3 kHz付近で切り替えに必要な振幅まで振動させることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電子サイクロトロン電流駆動用に周波数変調の必要ない大電力ミリ波帯高速スイッチの開発を行った。今年度は切替え特性の向上を図るためにスイッチの心臓部であるリング共振器のQ値の向上を目指して、C面カットサファイアハーフミラーの厚みを0.96 mmから0.98 mmに変更し、まず低電力試験で反射率を確認した結果、反射率が0.50から0.91に改善されたことを確認した。 次に、ハーフミラーをリング共振器に組み込み低電力特性試験を行ったが、共振周波数が昨年度より0.28 GHz低下し、切り替え特性の向上も確認できなかった。低電力試験終了後、その原因を詳細に検討した結果、0.98 mm厚のハーフミラーの固定用サポートとして間違えて1.7 mm厚用のものを用いており、ハーフミラーが最大で0.4°傾いたためQ値が大きく低下し、中心軸の周長が0.7 mm長くなったため共振周波数が低下したことが判明した。そのため、ハーフミラーのサポートを設計から見直し、落下防止機能を加えて0.98 mm厚用に製作し直した。 次に振動鏡を小型振動発生機で振動させ、振動鏡の振動と同じ周波数で出力が変位することを確認した。また、固有振動を利用した反射鏡をピエゾアクチュエータで駆動することで、1.3 kHzで反射鏡を切り替えに必要な振幅である60 μm以上(約77 μm)振動させることに成功した。来年度は正しいハーフミラー固定用テフロンサポートによる高速スイッチの再試験、及び、ピエゾアクチュエータを用いたkHzオーダーでの切り替え試験を予定している。以上から、本研究は順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で開発を行うミリ波帯高速スイッチの原理は、リング状コルゲート導波管のマイターベンド部の反射板を高速振動させることで、リング共振器の共振周波数を変化させて出力を高速に切り替える。今後はミリ波帯高速スイッチの3角型リング共振器部に、数kHzで固有振動が可能な反射板を組み込み、ピエゾアクチュエータで振動させて170 GHz帯の低電力ミリ波を用いて高速切替え試験を行なう。また、それと並行してコルゲート導波管中に蓄積された電力を測定するための方向性測定器の基礎研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
大電力ミリ波帯高速スイッチの切り替え速度の向上を目指して、反射鏡の駆動装置として用いていた小型振動発生機(加振力: 64 N)から、2個のピエゾアクチュエータ(加振力: 800 N × 2個)とピエゾドライバ へ変更したが、ピエゾドライバ を予定よりも安価で購入することができたため、次年度使用額が生じた。2020年度において、大電力試験用に開発する冷却可能な固有振動反射鏡の設計・製作に使用する予定である。
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