トカマク型核融合炉における電子サイクロトロン電流駆動による電磁流体力学的(MHD)不安定性の抑制効率向上には、プラズマの回転に同期して電磁ビームを高速で切り替えることが有効である。本研究では170GHz帯の大電力ミリ波帯における高速スイッチの開発を行った。本研究で開発するミリ波帯高速スイッチの原理は、リング状コルゲート導波管のマイターベンド部の反射鏡を高速振動させることで、リング共振器の周長を変化させることで共振周波数を振動させて出力を高速に切り替える。振動鏡の駆動周波数は、国際熱核融合実験炉(ITER)で発生が予測されている圧力駆動型のMHD不安定性の1種である新古典ティアリングモードの周波数(3-5 kHz)を想定して開発を行なった。 2022年度は、昨年度問題になった共振のQ値向上を目指して、高い反射率が期待される0.98 mm厚C面カットサファイアハーフミラーを用い、駆動部である積層圧電アクチュエータの固定方法を改善した振動板固定器具を製作し低電力試験を行った。2個の積層圧電アクチュエータで直径103mm厚さ2 mmの反射鏡(アルミナ分散強化銅)を固有振動周波数付近で振動させることにより、170 GHz帯の低電力ミリ波の1.54 kHzでの高速切替え試験を確認した。切り替えの程度は、第4ポート出力で約60%の振幅変調度(2021年度は3.4 kHzで33%)を確認した。昨年同様、第2ポート出力の変調度は常に第4ポート出力よりも大きかった。大電力試験実施を目指し振動部の水冷を試みたが、水没によるアクチュエータの劣化によって振動不能になり大電力試験は延期となった。
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