研究実績の概要 |
トカマク型核融合炉において高周波(RF)波動加熱を適用する場合に重要となるシースの形成を理解するため、研究代表者らはこれまでの研究で有限要素法によるrfSOLコードを構築した(Kohno, et al., Comput. Phys. Comm. 220, 129 (2017))。このコードでは任意の周波数および背景磁場の下で生じるシース電圧やシース内部の電力散逸を計算することが可能であるが、現状において解析できる現象はイオンリッチシースが保たれる範囲に限られている。背景磁場の磁力線と導体壁面の交差角がある値以下になると電子リッチシースが形成されることになり、その物理を正しく理解し、各種物理量を正確に計算するためには新たな計算モデルが必要となる。 上記のrfSOLコードでは、Myraが導出したシースインピーダンスパラメータ(Myra, Phys. Plasmas 24, 072507 (2017))を取り入れたシース境界条件を適用している。このパラメータは1次元領域においてミクロスケールの方程式を数値的に解くことにより求められたため、電子リッチシースにそのまま適用することはできない。そのため、この計算を2次元領域で実施するためのモデルの構築およびコードの作成が当面の課題となっている。 令和元年度では、まず1次元領域でミクロスケールの方程式を数値的に解くための有限要素スキームを構築し、あるパラメータを指定して得られた計算結果が、同じ条件下で得られたMyraらの結果(Myra, Phys. Plasmas 22, 062507 (2015))と良好に一致することを確かめた。2次元領域に拡張するためのモデルの構築(第1ステップ)も終了し、コードを作成するための具体的な計算に取り組んでいる最中である。
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