核融合炉における非接触ダイバータプラズマの動的応答特性の理解を目指し、運動論統合シミュレーションモデルの開発と非接触ダイバータプラズマの解析を行った。 まず、空間平均したプラズマ、原子、分子の密度の時間発展を解く0次元モデルを構築した。このモデルでは、原子の励起状態及び分子の振動励起状態、詳細な原子分子過程を考慮している。次に、プラズマの輸送、非平衡性を取り扱うために、核融合周辺領域を模擬した1次元のPIC(Particle-in-Cell)モデルを開発した。PICモデルでは、励起した原子・分子との衝突反応を考慮しており、原子・分子の密度変化を計算するために、前述の0次元モデルを組み込んでいる。ただし、0次元モデルでは、中性粒子の空間分布は扱えないため、別途、中性粒子輸送コードの開発も行った。 これらのモデルを用いて、非接触ダイバータプラズマの解析を行った。0次元モデルを用いた解析では、プラズマの熱パルスを簡易模擬した非定常解析を行った。熱パルスにより電離反応が大幅に増加する一方、同時に振動励起分子が増加する。これにより振動励起分子をソースとする分子活性化再結合が促進されることで、電離によるプラズマ密度増加を抑制されており、熱パルス時にも分子活性化再結合により非接触ダイバータプラズマが維持されることを示唆する結果を得た。PICモデルを用いた解析では、熱パルス入射後には、中性粒子を考慮しない場合にはバルク成分、熱パルスによる高エネルギー成分の2温度成分が形成されるが、中性粒子との反応を考慮するとさらに中間の温度成分が存在し、熱パルスの一部が中性粒子との反応によりエネルギーを失っている様子が確認できた。 以上をとおして、運動論統合シミュレーションモデルの基盤を構築することができ、それを用いた解析により、熱パルス時の非接触ダイバータプラズマの特性について知見を得ることができた。
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