研究課題
代替エネルギー源として開発されている熱核融合発電では、炉心プラズマを一億度まで加熱する必要がある。現在建設中の国際熱核融合実験炉(ITER)では、加熱方法の1つとして、高エネルギー中性粒子ビーム入射(NBI: Neutral Beam Injection)が採用されている。このNBIでは高密度(28mA/cm2)・大電流(56A)の水素負イオンビームが要求されているため、殆どの負イオン源では、電極表面にセシウム(Cs)を塗布する表面生成法を用いて高密度の負イオンを生成している。しかし、この方法では、Cs蒸気導入量の調整、絶縁部へのCs付着による絶縁破壊等、長時間運転に対する未解決の課題がある。そのため、核融合発電の実用化には、Csを使用いない非Cs型負イオン源の開発が急務となっている。また、負イオンビームと伴に引き出される随伴電子による引き出し電極への熱負荷を抑制するため、イオン-電子ビーム比(Ie/IH-)を0.5程度(軽水素運転時)に低減させる必要がある。本研究では、これらの要求に対応するため、体積生成法により負イオン生成が可能なシートプラズマに着目し、随伴電子ビームの低減が可能で高密度・大電流の非Cs型負イオン源の開発を目的とする。研究成果として、随伴電子ビームを低減させるため、プラズマ電極(PG)の引き出し孔付近に軟磁性体を設置し、引き出し電極周辺の磁場を局所的に湾曲させた磁気フィルター(SMF: Soft Magnetic material plate for Filter)を開発した。その結果、電極周辺の電子を効率よく補足し、引き出される随伴電子ビームを9割以上低減させ、Ie/IH-を0.5~1.0以下に抑制することに成功した。また、放電電流90A、引き出し電圧10kV印加時に負イオンビーム電流密度7.5mA/cm2の引き出しに成功した。さらに、これらの結果を発展させ、シートプラズマを用いた非Cs型負イオン源(TPDsheet-NIS)の設計を行い、大電流負イオン源としてのスケーリングを確立した。
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Nuclear Fusion
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www.sp.u-tokai.ac.jp/~tone/