研究課題/領域番号 |
19K03797
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
横山 雅之 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (60290920)
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研究分担者 |
山口 裕之 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (90797101)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 核融合プラズマ / 熱輸送 / 統計モデリング / 赤池情報量規準 / 大規模データ |
研究実績の概要 |
核融合科学研究所の核融合プラズマ実験装置である大型ヘリカル装置(LHD)における高イオン温度シナリオの複数の放電から、統合輸送解析スイートTASK3D-aを用いて構築した熱輸送係数解析データベース(データ総数~3000)を用いて、回帰手法に基づくモデリングをさらに進めた。イオン熱輸送係数に対して行っていた試行研究の順調な進展を経て、電子熱輸送係数にもこの手法を適用し、それぞれに対して、9つの無次元変数を用いた回帰式を得た(Log-linear重回帰分析)。この回帰式の妥当性検証のために、データベースに含まれていない放電(しかし、プラズマ温度や密度はデータベースの範囲内)の熱輸送係数分布、さらには温度分布予測(総計12ケース)を行った。熱輸送解析データベースに回帰手法を適用する本取り組みによって、大規模シミュレーションやプラズマの熱輸送過程の分節化(衝突、乱流起因など)を行うことなく、妥当な温度分布の再現が行えることが徐々に示されてきている。さらに、赤池情報量規準を用いて、回帰に用いている変数の中で統計的に重要な寄与を行っている変数を選び出す操作を行うと、物理的に重要と考えられる変数と合致し、しかも、その冪数が収束する傾向にあるという興味深い知見も見出された。 また、派生として、LHD重水素実験における中性子発生率(Sn)データベースの回帰で得たガイドラインに基づいて、Snの記録更新を実現した。データベースと回帰の活用によるプラズマ性能向上という研究動向を定着させる端緒を得たことは大きな成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予想を超えて、「情報量規準による重要変数抽出」と「物理的に重要な因子」の関係性を見出したこと、また、異なる研究課題である「プラズマ性能向上」への同様手法の適用とそれによる性能向上の実現(実証)を行ったことから、「当初の計画以上に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
回帰に用いる説明変数の中で、情報量規準(AICやBIC)によって重要な変数を選び出すと、物理的にも重要な変数と一致する傾向があることを見出したことを受けて、統計的変数選択と物理モデリングとの関連についてさらに詳しく研究を進める。また、データベースと回帰の活用からのプラズマ性能向上という研究動向を定着させるべく、多様な研究課題に対する適用性の調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、国内外出張(研究打ち合わせ、学会現地参加)を見送ったため旅費の支出が減少し、次年度使用額が生じた。研究が計画以上に進展していることから、2021年度は、その進捗状況に合わせた成果報告や研究打ち合わせなどに使用する予定である。
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