大規模熱輸送解析データベースを活用した核融合プラズマの熱輸送モデリングの手法として、プラズマ物理を基盤としない回帰モデリングによる実効性のあるモデリングに加え、核融合研究へのデータ同化手法の導入によって生み出された、プラズマ物理に基づく輸送モデルと観測データに同化したモデルとのギャップを回帰式で表現するという2つ目の新たなアプローチについて成果を挙げた。前者では、多くの説明変数を用いた回帰性能の向上とともに、過学習を回避して見通しのよい回帰式を得ることも目指し、その過程で赤池情報量規準(AIC)の活用という着想を得ていた。その結果、後者のケースでにおいても、実験解析では認識されていた(論文等での図の横軸として活用されていた)が、輸送モデルには陽に含まれていなかった電子温度とイオン温度の比などの変数が統計的に重要な変数として選定され、しかもそのべき符号が実験で認識されているものと矛盾しない、という非常に興味深い結果を導くことができた。これは、核融合プラズマの大規模熱輸送データベースから抽出される特徴(重要変数、変数依存性など)がプラズマ物理の特性を反映していることを意味している。これらについて、国際会議(国内開催)における基調講演やポスター発表、英文学術誌への論文発表などでの成果発信とともに、核融合プラズマの熱輸送の問題に取り組んでいる研究者や統計数理研究所の統計の専門家との議論で波及性や手法の汎化性についても議論を行った。
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