研究課題
2019年度に製作した周波数77GHz帯用の不要反射波フィルター装置の評価を継続して行った。核融合科学研究所の電子サイクロトロン共鳴加熱(ECH)装置システムにおいては、77GHz帯で1MW出力のジャイロトロン装置で発生したメガワット級のミリ波を、ジャイロトロントロン装置から大型ヘリカル装置(LHD)まで、コルゲート導波管(内径88.9mm)システムによって、低損失で長距離伝送している。前年度に設計、製作、設置された77GHz用不要反射波フィルター装置の評価を行った。ジャイロトロンからLHDまでのコルゲート導波管の長さは、およそ90mである。本77GHz用フィルター装置は、ジャイロトロンの出力窓からおよそ5m程度のところのコルゲート導波管部に設置している。 この装置は、77GHzジャイロトロンの導波管ラインに設置されており、LHDにおけるプラズマ実験中において、正常に動作し、反射波によるジャイロトロンの発振停止動作もなく、安定にプラズマ実験を進めることができた。2020年度は、所有ジャイロトロンのもう一つの周波数帯で、高パワー出力が可能な154GHz帯ジャイロトロン出力のミリ波伝送系用として、不要反射波フィルター装置を設計し、製作を行った。本154GHz用不要反射波フィルター装置の設計においては、このフィルター装置で使用している対向した2本の円形コルゲート導波管間のギャップ間隔を、さらに長く取ることができ、高周波数帯での不要モードフィルターとしての性能を維持できるように設計、製作した。対向する円形コルゲート導波管のギャップ間隔は、300mmとした。この場合、HE_11モードでの入射波に対して、導波管ギャップでの損失は、約2%と計算で予測されている。今後、154GHzジャイロトロン系の伝送系に設置し、不要反射波フィルターとしての性能評価を行ってゆく。
2: おおむね順調に進展している
2020年度においては、計画通り154GHz帯の不要反射波フィルター装置を、予定通り設計、製作し、完成できた。今後は、製作された154GHz用不要モードフィルター装置を、154GHz帯のコルゲート導波管からなるミリ波伝送系ラインに挿入、設置し、高周波数154GHz帯での不要モードフィルターとしての性能評価を行ってゆく。
本研究の今後の進め方としては、まず従来の77GHz帯用の不要反射波フィルター装置の性能評価と、新規設置する154GHz帯用として設計、製作した不要反射波フィルター装置の性能の比較評価を行ってゆく。不要反射波強度の評価については、直径88.9mmのコルゲート導波管系からなるミリ波伝送系において、ジャイロトロンのミリ波出力窓近傍に設置してある準光学的整合ユニット(MOU)内での漏洩ミリ波の強度をダイオード検知器などを用いて計測する。ここで、準光学的整合ユニットとは、複数(この場合2枚)のミラー列から構成されており、ジャイロトロン窓からのミリ波出力をコルゲート導波管に最小限の損失で結合できるように、その強度分布の整形を行うユニットである。さらにコルゲート導波管伝送路中に設置されているミリ波強度の信号を計測する方向性結合器の信号により、コルゲート導波管伝送系におけるプラズマ側からの反射波強度の計測を試みる。ただし、方向性結合器は、ジャイロトロンからプラズマへHE11モードで伝送されるときに、その進行波強度を測定できるものであるので、プラズマ側からの反射波については、コルゲート導波管の基本モードであるHE11モードだけでなく、高次のモード成分も多く含まれていると予想されるので、正確な信号強度は測定できない可能性がある。その代替案として、ジャイロトロンの出力窓近傍に設置してあるMOU内での漏洩電磁波の強度の変化をクリスタル検波器などで測定することにより、プラズマや伝送路側からの反射波の強度を評価することができると考えられる。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 6件)
Nuclear Fusion
巻: 61 ページ: 026012~026012
10.1088/1741-4326/abc977
Fusion Engineering and Design
巻: 153 ページ: 111480~111480
10.1016/j.fusengdes.2020.111480
Journal of Instrumentation
巻: 15 ページ: C01002~C01002
10.1088/1748-0221/15/01/C01002