研究課題/領域番号 |
19K03800
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
中村 浩章 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (30311210)
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研究分担者 |
澤田 圭司 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (40262688)
齋藤 誠紀 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (40725024)
田村 祐一 甲南大学, 知能情報学部, 教授 (50311212)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 中性原子分子 / 衝突複写モデル / 分子動力学法 / 水素原子 / 水素分子 / 水素同位体 / 炭素 / タングステン |
研究実績の概要 |
本年度は、プラズマ対向壁に水素原子が入射する系を、分子動力学法を用いて計算を行った。水素原子が入射すると,プラズマ対向壁から水素原子・分子が放出する場合がある。このようにして放出した水素原子・分子の放出角やエネルギー分布等を解析した。具体的な計算としては、炭素壁に水素原子が入射する場合の計算を行った。原子間相互作用にはBrennerポテンシャルを用いた。水素を含有するアモルファス炭素を標的材とした。放出水素分子の回転準位Jおよび振動準位vの分布を求めることができた。比較的高い回転・振動準位を有する水素分子が存在することがわかった。また,これらの高い回転・振動準位を有する水素分子は,水素原子の入射から1ps以内の短い時間に放出する。このことから、入射水素原子との衝突過程が高準位の分子を生むこと、そして、振動準位が基底状態(v=0)の場合に、回転準位Jごとに励起される分子の分布を求めることができた。さらに、この分布がボルツマン因子に従うとしてフィッティングを行い,回転温度を評価することができた。入射水素原子と炭素内にいる水素原子たちとの衝突過程が非平衡現象であるため、ボルツマン因子から外れる高い回転準位を有する水素分子が発生したという解釈が成り立つ。熱エネルギーよりも格段に高い振動・回転エネルギーを有するこれらの分子が周辺プラズマの挙動に強く影響する可能性を指摘することができた。 また、壁から発生する水素について、機械学習を用いて発生量の予言も開始した。これは、分子動力学の計算時間がかかるため、機械学習を利用することで、計算負担を少しでも軽減することを目指したものである。現時点では、水素照射からある程度時間がたち、平衡状態に近づけば、機械学習を用いることで、発生する水素についての情報を得られる可能性が高いことをつかんでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水素分子の分布から回転温度まで求めることができた。さらにそれからのずれを定量的に評価でき、順調に進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
炭素のみならずタングステンにおいても水素放出を進めていきたい。さらに、機械学習については、引き続き教師データを集めることで、その制度を増していきたい。 また、タングステンについては、タングステンでは水素の吸蔵状態を、タングステンの「素の状態」からためていくのにはとても長い計算時間が必要であることがわかっている。つまり、肝心の水素発生にいたるまでに計算時間が及ばないということになる。そこで、「素の状態」からではなく、人工的ではあるが「実の状態」に近いタングステン中の水素吸蔵状態を作り、そこから分子動力学を進めていきたい。そのため、タングステン中の空孔およびそれに水素が含有されている状態についての挙動を、丁寧に調べる。
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