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2020 年度 実施状況報告書

第一原理シミュレーションによる3次元磁場プラズマの大域的・動的輸送現象の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K03801
研究機関核融合科学研究所

研究代表者

松岡 清吉  核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (10609986)

研究分担者 沼波 政倫  核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (40397203)
仲田 資季  核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (40709440)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード核融合 / プラズマ / 3次元磁場 / 第一原理シミュレーション / 大域的輸送 / ジャイロ運動論 / プラズマ乱流
研究実績の概要

本研究課題では、複雑な3次元的磁場構造をもつヘリカル・ステラレータ型磁場閉じ込め装置内のプラズマ輸送現象について、特に乱流および衝突性(新古典)輸送と加熱入力等のバランスで決まる大域的・動的な分布形成過程を明らかにすることを目的としている。プラズマの大域的・動的輸送現象を取り扱うためには、磁場閉じ込めプラズマの第一原理であるジャイロ運動論に基づいたシミュレーションを行う必要がある。本課題における具体的な目標としては、1) 保存型解法に基づいた大域的full-fジャイロ運動論コードであるGT5Dを3次元磁場配位へと拡張し、2) GT5Dを用いた大域的乱流輸送シミュレーションによって3次元磁場プラズマの大域的輸送特性を調べることである。
今年度は、前年度に引き続き 1) のGT5Dの拡張開発に取り組んだ。前年度までに開発したプラズマ乱流揺動を決定するためのポアソンソルバについて、その妥当性検証に取り組むとともに計算の高速化を図った。開発した3次元ポアソンソルバを2次元系である軸対称磁場へと適用し、2次元ポアソンソルバを用いて得られていたこれまでの結果を再現することを確認した。一方で、プラズマの静電乱流解析では行列サイズに対して非ゼロ要素が非常に多くなることから、通常の疎行列反復解法では計算の高速化に限界があることが判明した。その問題を解決するため、近年提案された行列分解に基づく解法を新たに採用することとし、新解法を用いたソルバをGT5Dに実装した。
また、プラズマの乱流輸送解析では、磁気座標系と呼ばれるトーラス磁場の解析に適した座標系を構築することが必要となる。本研究では、滑らかな大域的磁気座標系構築を行うため、総当り方式の磁力線追跡に基づく新たな計算手法を提案し、従来手法で発生していた座標変換に伴う不連続性を回避することを可能にした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

今年度は当初、前年度までに開発したポアソンソルバの最適化を図るとともに、プラズマ乱流輸送のベンチマーク実施を予定していた。しかし、静電乱流を取り扱うための電子モデルに由来した行列内の非ゼロ要素数の増大により反復法の収束回数が増大し、さらに一反復あたりの計算性能向上もハードウェアの制約から難しいことがわかり、プロダクションラン実施に向けた計算性能向上のため種々の行列解法をトライアンドエラーで検討する必要が生じた。
また、磁場閉じ込めプラズマの乱流輸送解析では磁気座標系と呼ばれるトーラスプラズマの記述に適した座標系の構築が必要となる。しかし、これまで用いられてきた手法では、大域的な磁気座標系構築の際に不連続な面が生じる場合があるなど数値的問題があることが判明し、滑らかな大域的座標系構築を行うための数値計算手法を開発する必要が生じた。
以上、ふたつの理由から、計画に遅れが生じることとなった。

今後の研究の推進方策

これまでの研究課題の進展により、GT5Dを用いた3次元プラズマの大域的・動的輸送現象解析のための、3次元ポアソンソルバの開発、および磁気座標系構築手法の開発は概ね完了した。
今後は、 今年度新たに実装した行列分解法に基づくソルバの計算性能を評価し、計算を実施するハードウェアに合わせた最適化を施すことで計算性能の向上を図り、定常的なプロダクションランを円滑に実行できるよう計算コードの整備を進める。また、物理解析課題としては、3次元磁場における乱流解析の妥当性検証を目的として局所乱流解析シミュレーションとのベンチマークを行うとともに、装置サイズや磁場強度等のパラメータサーベイによって大域的乱流輸送の基礎的特性について検討する。

次年度使用額が生じた理由

研究進展の遅れにともない、当初予定していた機器(解析用ソフトウェアやその実行のためのラップトップPC、解析結果保存用ハードディスクドライブ等)の導入を次年度以降としたため、次年度使用額が生じた。また、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、他機関での研究打合わせや国際会議への参加を見合わせたことで、予定した旅費が不使用となった。
次年度予算とあわせて請求した助成金の今年度の使用計画として、物品費は主にラップトップPCおよび大容量ハードディスクドライブ購入のために使用し、新型コロナウイルスの感染拡大状況次第ではあるが、旅費としては今年度見合わせた研究打ち合わせ、および学会参加のために使用する予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2020 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)

  • [国際共同研究] Max Planck Institute for Plasma Physics(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      Max Planck Institute for Plasma Physics
  • [雑誌論文] Gyrokinetic simulations for turbulent transport of multi-ion-species plasmas in helical systems2020

    • 著者名/発表者名
      Nunami M., Nakata M., Toda S., Sugama H.
    • 雑誌名

      Physics of Plasmas

      巻: 27 ページ: 052501~052501

    • DOI

      10.1063/1.5142405

    • 査読あり
  • [学会発表] Turbulence Simulations for Stellarator Plasma Transport2020

    • 著者名/発表者名
      Nunami M.
    • 学会等名
      30th Summer School and International Symposium on the Physics of Ionized Gases (SPIG2020)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Pinpoint gyrokinetic simulation for turbulent transport prediction2020

    • 著者名/発表者名
      Nunami M., Toda S., Sugama H.
    • 学会等名
      29th International Toki Conferenece (ITC29)
    • 国際学会
  • [学会発表] Exploration of next generation three-dimensional magnetic configuration with enhanced zonal flows2020

    • 著者名/発表者名
      Nakata M. Matsuoka S., Nunami M.
    • 学会等名
      29th International Toki Conferenece (ITC29)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 乱流最適化配位創成に向けた乱流輸送モデリング2020

    • 著者名/発表者名
      仲田資季, 松岡清吉, 沼波政倫
    • 学会等名
      日本物理学会2020年秋季大会
  • [学会発表] 乱流抑制配位創成に向けた乱流モデリングおよび数理計画探索2020

    • 著者名/発表者名
      仲田資季, 松岡清吉, 沼波政倫
    • 学会等名
      第37回プラズマ・核融合学会年会

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公開日: 2021-12-27  

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