研究課題
NAGDIS-II装置において、重水素プラズマ放電の実験を本格的に開始した。放電電圧が高い条件で放電の不安定化が見られたが、放電電圧の放電領域ガス圧依存性を明らかにすることで、ガス流量とポンプ排気速度を制御ノブとした安定放電を実現した。さらにレーザートムソン散乱計測を用いることで、複数条件における上流電子密度、電子温度を計測した。同装置の数値モデル研究では、ガスの供給・排気特性を再現するために、装置形状に加えて排気部に相当する境界面の粒子損失率について数値的なスキャンを行った。そして、プラズマがない状況におけるガスの供給量とガス圧の実際の測定結果から、装置内ガス圧に対する粒子損失率の依存性を定量化し、現実に則した粒子バランスを実現した。ダイバータ配位に関して、外部コイルによるレグ形状の制御手法の開発を行い、レグの長さやダイバータ板の位置がプラズマ輸送へ与える影響の評価を行った。ヘリオトロンJでは、周辺部に磁気島が存在する配位における実験、およびモデリング計算の準備を進めた。ヘリオトロンJ配位の最外殻磁気面は周辺の有理面によって規定され、回転変換の値によってはW7-Xのアイランド配位に類似した周辺磁気島が存在する配位を実現できる。実際に磁気島の位置等を変える実験を実施し、閉じ込め性能の回転変換依存性や、磁気島局在領域に対応した特異な密度・温度分布を観測した。水素分子の振動・回転状態を区別した中性粒子輸送コードの開発を進め、プロトンの3体再結合や分子活性化再結合にともなう粒子生成を組み込み、再結合プラズマを扱えるようにした。また、中性粒子同士の弾性散乱に関して、粒子追跡時の背景となる中性粒子の密度分布や速度分布を計算する収束計算の技術を確立した。さらに、信州大学RF放電装置を用いたコードの検証を継続し、実験で得られる原子・分子スペクトルと計算結果の比較研究を行った。
3: やや遅れている
コロナ禍で海外との行き来が困難な状況の下、国内で行う研究テーマを優先的に実施する中で、体積再結合過程を含めたEMC3-EIRENEコードの導入に関して遅れは生じているものの、Wisconsin-Madison大学の研究グループから当該コードの論文[H. Frerichs et al., Phys. Plasmas 28, 102503 (2021)]が出版されるなどの進展があり、コードの開発状況について情報共有を行った。そのコードの適用を前提に、重水素ガスの吸排気条件を含めた数値モデルを開発するなど、準備が進展した。NAGDIS-II装置における重水素放電の安定化を実現させ、モデルと実験の比較研究への準備が大きく進んだ。中性粒子輸送についても、振動・回転状態を区別した水素分子衝突輻射モデルおよび輸送コードの開発では、新たにトカマク型DEMOに対応し、また容器壁面での中性粒子の反射過程に注目したRF放電装置によるモデル検証など、順調に進展した。プラズマ分布を得るために開始したPICコードの開発に関しても、電子とプロトンの温度緩和を含める進展があった。
NAGDIS-II装置では、上流・下流の電子密度、電子温度の径方向分布のデータセットを複数の実験条件で取得する。特に、重水素非接触プラズマ中のパラメータデータセットの取得は初めてとなる。このほか、基礎データとしてガスのみをパフ&ポンプした際のガス圧を計測する。数値モデリングでは、体積再結合過程を含めたEMC3-EIRENE計算を行い、体積再結合反応の起きる条件や、その結果について、実験計測による定性的な検証を行う。ヘリオトロンJ装置では、プローブ計測による周辺プラズマパラメータ分布およびフロー計測、またダイバータプローブによるダイバータプラズマ計測を行う。モデリングとしては、複数の磁気島配位におけるグリッドの準備、およびモデリング計算を実施し、磁気島制御実験との比較を進める。重水素プラズマの衝突輻射モデルおよび中性粒子輸送コードを整備する。またコードの検証として信州大学RF放電装置で重水素放電を行い、水素原子・水素分子の発光線が計算で再現できるかどうか調べる。これまで開発した計算機コードを非接触ダイバータプラズマに適用し、粒子・運動量・エネルギーバランスについて知見を得ることを目指す。
国際会議や研究会がリモート開催になったため,旅費が不要となった.次年度は繰越金を含めて,数値計算用ワークステーションの購入を検討している.
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 8件、 招待講演 3件)
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