研究課題
本研究の目的は、高速分光計測を用いて、核融合炉心プラズマの燃料源となる、固体水素氷粒の溶発素過程を明らかにすることである。溶発素過程を理解するためには、固体水素氷粒の溶発によって形成される高密度プラズモイドの電子密度・電子温度の2次元内部分布を得ることが重要である。本研究では、ファイバアレイと高速度カメラを用いた計測システムを構築することにより、高密度プラズモイドの2次元内部分布を評価する。本年度は、まず計測システムの根幹となるファイバアレイの仕様を策定するとともに、その製作を行った。高密度プラズモイドの溶発光の取り込みに使用するファイバアレイは空間分解能を確保するために、5.5mm四方に12本×12本のファイバが並ぶ構造とした。他方、2次元配列として取り込まれた光は1列に並び替えられ1次元配列としてスリットへ送られる仕様とした。このとき、配列に対する位置を特定しやすくするためにダミーベットと呼ばれる入力に無関係な情報としてファイバ7本を加え、スリットへはファイバ151本分の情報が縦一列に約35mm幅で送る仕様とした。上記の仕様を満たすファイバアレイを製作した。次に、ファイバアレイによって高密度プラズモイドの発光を取り込んだ後の仕様を決定した。具体的には、高さ35mmのスリットを撮影素子のサイズが17.6×13.2mm^2の高速度カメラでスペクトル分解できるようにシステムを構築した。その結果、高速度カメラを用いてスリット高さ35mmを測定する際は、焦点距離135mmの集光レンズを用いた分光システムではレンズ間距離が21cm以内であればスリット全体を測定可能であることがわかった。また、焦点距離180mmの集光レンズを用いた分光システムではスリット高さ全体を測定することはできないが、より高分散での測定が可能となる。その場合、レンズ間距離は21cm以上離せば良いことがわかった。
2: おおむね順調に進展している
本年度は初年度にあたり、高速分光計測システムの構築を目的としていた。計測システムの根幹であるファイバアレイおよびスリット、レンズの仕様を決定、製作し、基本的な構築が今年度すでに終了していることから、計画通りに進展していると言える。
本システムを用いれば、Hβ線を少なくとも2次回折光まで測定可能であることがわかった。すなわち、基本的な計測システムは構築できたことになり、今後計測システムの最適化を行う。例えば、精度の向上を見込むべく、回折格子の回転角をより正確に細かく調整するようにする。また、空間分解能は要求を満たしており、焦点を精度よく合わせることで今後、更なる精度向上が期待できる。以上のようにシステムを最適化した後、より正確かつ緻密な装置設計を行い、装置関数をはじめとしたパラメータを再計測する予定である。さらに、Hαフィルタに関する特性評価測定を行い、計測器の検証を行うとともに、実際にヘリオトロンJ装置へ導入し、電子密度計測を行うなど初期計測を行う。現在すでに可視分光計測やフィルタ分光計測が立ち上がっており、本研究で得られた高密度プラズモイドの2次元内部分布と比較する。
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額がわずかに異なった。しかしながら、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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Plasma Physics and Controlled Fusion
巻: 61 ページ: 075014
https://doi.org/10.1088/1361-6587/ab1d40