研究課題
本研究では、固体水素ペレット(以下、ペレット)の溶発機構理解のため、高速度カメラや分光機器を用いた実験プラットフォームを構築し、ペレット溶発雲の周辺部に現れる揺動現象を発見したほか、ペレット溶発雲の電子密度測定が進展し、国際会議にて2件のプレナリー、招待講演を行うに至った。成果の概要として、ここでは、Paαを用いたペレット溶発雲の電子密度測定について報告する。ペレット入射法の開発は将来の核融合プラズマへの燃料供給方法のひとつとして重要な課題であり、ペレット溶発過程解明は核融合プラズマの高密度化の物理過程の理解、燃料供給の最適化にとって重要である。ヘリオトロンJでは、本研究により、小サイズの固体水素ペレット入射が整備され、ペレット溶発雲の物理理解を目指したさまざまな分光計測が可能となった。本研究では近赤外域のPaα (1875.13 nm)線を適用する原理検証を行った。シュタルク幅はおおよそ波長の2乗に比例するため、Paαは通常用いられる同じ上準位を持つ可視領域のHβ(486.13 nm)輝線に比べ、3倍程度広い。従って、要求される分光器の波長分解能を低くできる、あるいは測定密度下限を下げられる利点がある。本研究では、シュタルク広がりから電子密度を決定するため、溶発雲プラズマは低温・高密度の局所熱平衡状態で温度を1 eVと仮定し、電子密度10^17-10^23 m^-3の範囲でスペクトルプロファイルを計算し、シュタルク幅を求め、その対応関係の定式化を行った。実験には、512チャンネルInGaAs検出器、有効感度800 - 2150 nm、逆線分散96.6 nm/mm、スリット幅100 umの低分散簡易分光器で計測を行った。装置幅14.86 nmの10分の1程度をシュタルク広がりの分解能とみなすと測定密度下限が3×10^21 m^-3程度と評価できた。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (2件)
Review of Scientific Instruments
巻: 93 ページ: 113537
10.1063/5.0101885
Scientific Reports
巻: 12 ページ: 14204
10.1038/s41598-022-18239-z
https://www.nifs.ac.jp/news/collabo/220930.html
https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/2022-09/220930_ohshima-d9cbe67cc245ecd478c4bce8597cb588.pdf