スパッタリング成膜中の基板に入射する正・負イオンのエネルギー分布関数(EDF)を安価で簡便に計測するために、磁気フィルタを利用した反射電界型エネルギー分析器(Retarding field energy analyzer: RFEA)を提案し、ターゲット浸食領域対向部付近で高エネルギーの負イオンが基板に入射することを確認した。これまでに、(1)RFEA前面に局所的な交差磁場領域を形成すると、RFEAへの負イオン流入束はほとんど影響を受けないが、電子流入束が2桁以上抑制され、正イオン流入束も一桁程度抑制されること、(2)RFEA内の荷電粒子のグリッド透過率を向上させ、グリッド電位分布を最適化することでコレクタ電流が増加することを確認した。(3)磁気フィルタの磁束密度の最適値が約20mT程度であり、磁気フィルタの磁束密度が50mTを超えると放電自体に影響が及ぶこと、(4)微小電流測定性能が高いデジタルマルチメーターを利用することでエネルギー分解能の向上とデータ取得時間の短縮を行えることなどを確認した。また、(5)金属添加酸化亜鉛ターゲットと銅ターゲットにおいて負の荷電粒子のEDFの比較測定を行った結果、銅ターゲットでは負イオンの信号が全く得られないことを確認した。以上により、(6)直流マグネトロンスパッタリング(DCMS)における基板入射荷電粒子のEDF測定において、高エネルギー酸素負イオンによると考えられるEDFの構造が詳細に確認できた。さらに、データ収集・解析・可視化の効率化とデータ処理効率の改善と保守・メンテナンスを容易にするために新たに2号機の製作、プラズマ対向グリッドを浮遊電位にした場合と接地した場合の比較などを行った結果、(7)高周波マグネトロンスパッタリング(RFMS)における高エネルギー負イオンのEDFの構造も確認することができるようになった。
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