研究課題/領域番号 |
19K03814
|
研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
森 晃 東京都市大学, 理工学部, 教授 (60219996)
|
研究分担者 |
小林 千尋 東京都市大学, 理工学部, 講師 (00570699)
工藤 美樹 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (80241082)
平田 孝道 東京都市大学, 理工学部, 教授 (80260420) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 大腸癌 / 大気圧低温プラズマ / がん治療 |
研究実績の概要 |
我が国におけるがんの部位別死亡者数では,大腸癌の罹患率は男性が3位,女性が1位と非常に高い。大腸癌の代表的な治療法には,内視鏡治療,開腹手術や腹腔鏡下手術といった外科治療,薬物療法等がある。大腸癌の病期が初期であれば手術で取り除くことが可能であるが,進行していた場合は薬物療法や対処療法が選択される。また,内視鏡治療以外の治療法ではいずれも侵襲性が高く,患者への負担が問題となる。そこで我々は,低侵襲な治療法という観点から,大気圧低温プラズマを用いることによる大腸癌の新規治療法について検討した。 ヒト結腸腺癌細胞 COLO 205 及び正常細胞としてマウス頭蓋冠細胞MC3T3-E1を用いて大気圧低温プラズマ照射培地の暴露による評価を行った。初めに、我々の装置による大気圧低温プラズマによって生成される代表的な分子としては,中性分子,イオン,ラジカル,一酸化窒素などの窒素酸化物が含まれることを確認した。 実験結果では、プラズマ照射培地での正常細胞では最終的な細胞数に変化はなく,プラズマ照射培地による大腸癌細胞で優位に減少していることが確認された。これは、プラズマ照射培地暴露後の12時間、72時間後の比較では、72時間後が優位に大腸癌細胞が減少していた。 従って,本研究のプラズマ照射培地使用による癌細胞実験の結果から、現在広く検討が行われている化学療法で正常細胞に対する影響がなく,癌細胞特異的な治療法の開発がプラズマ照射で可能かもしれないと考えられた。今後は細胞死、増殖抑制経路の検討を行っていくとともに,癌細胞に対してより効果の高い照射条件などについても調査を行う。また、in vitro からin vivo での評価も重要であるために、今後は、プラズマ照射腸洗浄液を作製して大腸癌モデルラットに使用して大腸癌治療に対する大気圧低温プラズマの有効性を検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ感染症による緊急事態宣言のために大学研究室使用が制限されたり、また、購入した大腸癌細胞の搬送遅れなどにより実験が遅れたため。
|
今後の研究の推進方策 |
In vitroの実験として、正常細胞と大腸癌細胞に対して大気圧低温プラズマ培地の暴露を行い,評価を行った。その結果,正常細胞では最終的な細胞数に変化はなく,培養液にプラズマ照射して培養した大腸癌細胞が優位に減少することを明らかにした。今後はin vitroの実験再現性評価と大腸癌細胞に対してより効果の高いプラズマ照射条件などについても調査を行っていく。 我々のプラズマによる大腸癌治療は、直接病変部に対してプラズマを照射するのではなく,大腸洗浄液などにプラズマを照射し癌細胞を減少される治療法である。このような治療法は、これまでとはまったく違った治療法と考えられる。現在広く研究が行われている化学療法での正常細胞に対する影響がなく,癌細胞に特異的な治療法の開発がプラズマにより可能となるかもしれない。今後は、プラズマ照射大腸洗浄液の癌細胞死や増殖抑制経路の検討を行っていくとともに,大腸癌細胞に対してより効果の高いプラズマ照射条件を踏まえた新しい治療法なども検討していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、出張による研究成果検討会や学会出席がなかったため。そのため、今年度は、対面による研究の再現性評価や、成果検討会を広島大学医学部の工藤教授のところで行うことを計画している。
|