研究課題/領域番号 |
19K03814
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
森 晃 東京都市大学, 理工学部, 教授 (60219996)
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研究分担者 |
小林 千尋 東京都市大学, 理工学部, 講師 (00570699)
工藤 美樹 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (80241082)
平田 孝道 東京都市大学, 理工学部, 教授 (80260420) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | がん治療 / 大腸癌 / 大気圧低温プラズマ |
研究実績の概要 |
大腸癌の罹患率が増加している。そこで我々は,低侵襲な治療として大気圧低温プラズマを用いてプラズマ照射培養液(プラズマバブル群、動物実験では腸洗浄液に照射予定)を作製して大腸癌培養細胞にたいしての有効性を検討することによる大腸癌の新規治療法について検討した。 ヒト結腸腺癌細胞 COLO205を用いて大気圧低温プラズマ照射培地の暴露による評価を行った。比較対象群として未処理の培地で培養する Control群、Heガスのみ照射する Heガス照射群を設け、プラズマバブル群と比較した。 実験結果では、Control群と He照射群の間で細胞数変化に有意差が確認できなった。またHe照射による COLO-205への影響はほとんどないと考えられた。プラズマバブル群はControl群、 He照射群と比べ有意に細胞数が減少し癌細胞の減少が確認できた。 大腸癌細胞の減少の誘因として、プラズマ照射に伴う活性酸素種による細胞死の誘導が考えられる。そこで、リアルタイムPCR(Polymerase Chain Reaction)法を用いた細胞死関連遺伝子の検出を行い、大腸癌細胞の減少がアポトーシスに起因するか検討した。活性酸素種の ASK1活性化によるアポトーシスはミトコンドリアを介し て誘起される。そこでCaspase-9はミトコンドリアから放出されるシトクロム Cによって活性化され、それに続くアポトーシス実行タンパクを活性化する遺伝子であるため、その発現量を測定することによりアポトーシスの誘起が確認できる。そのため、Caspase-3の遺伝子発現解析を行いプラズマ照射群でその発現量が増加する傾向が認められた。そのため、ミトコンドリアを介したアポトーシスである可能性があるが再度実験回数を増やし検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
大学学内研究室、特に細胞培養室などは2~3か月間などの連日細胞管理が必要となる。そのためにコロナ感染症による先が読めない状況下で細胞レベルでの研究実験ができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終目標は、プラズマバブリング腸洗浄液による大腸癌治療にある。プラズマ照射培地使用による大腸癌細胞実験の結果から、現在広く行われている化学療法で正常細胞に対する影響がなく,癌細胞特異的な治療法の開発がプラズマバブリング腸洗浄液で可能かもしれないと考えられた。今後は細胞死、増殖抑制経路の検討を行っていくとともに,癌細胞に対してより効果の高いプラズマ照射条件などについても調査を行う。また、in vitro からin vivo での評価も重要であるために、今後は、プラズマ照射腸洗浄液を作製して大腸癌モデルラットに使用して大腸癌治療に対する大気圧低温プラズマの有効性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症による細胞培養研究の連日調査ができなかったために研究の遅れが発生した。 今年度は、N一 メチルーN'一ニトローN一ニトロソグアニジンとAzoxymethane (AOM)とDextran Sodium Sulfate (DSS)による薬物誘発大腸癌モデル動物を作製し癌の発育状態を内視鏡下に行い、プラズマバブリング腸洗浄液による大腸癌治療の効果をラットを使用し検討する。正常発育ラット(正常群)に対して麻酔による無意識下処置を施した後、内視鏡を利用して大腸の正常発育状態を観察する。さらに、大腸癌誘発ラットにプラズマバブル腸洗浄液を内視鏡的に投与し正常群と比較検討する。効果検討には、血液検査による肝機能、サイトカインなどの炎症マーカーや心電図、血圧などの循環動態変動の解析を行う。循環評価では、心電図では、バブル腸洗浄液投与中の心拍数変化、不整脈の発生なども検討する。最終的には、大腸の病理組織標本を作製し正常群と大腸癌群で細胞形態などから比較検討する。
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