研究課題/領域番号 |
19K03818
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
伊敷 吾郎 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (50710761)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 超弦理論 / 行列模型 |
研究実績の概要 |
行列模型は弦理論(およびM理論)を記述すると期待されている模型であるが、2020年度はこの模型について研究し、以下に述べる二つの結果を得た。 (1)行列正則化の一般化の発見 (2)行列模型の数値解析による2重臨界極限の検証 以下ではそれぞれの結果についての概要を述べる。 まず(1)は、行列模型と弦理論の対応関係の一つとされる行列正則化についての研究の結果である。行列正則化とは、弦理論に現れる「場」の自由度を、有限サイズの行列によって近似する方法である。本研究では、この方法についての過去の数学の文献を改めて見直すことで、新たな一般化が可能であることを見出した。この方法により、これまで通常の場(スカラー場)にしか適用できなかった行列正則化を、様々な場(テンソル場や電荷をもつ場)にも適用できるようになった。この結果は弦理論に含まれる様々な物体がどのように行列模型に含まれるかを理解する上で重要になると期待される。 次に(2)は弦理論の定式化を与えると予想されている、ある行列模型(BMN行列模型)についての研究結果である。この行列模型は、理論のパラメータの特殊な極限を取ることで、弦理論のある広がった物体(NS5ブレーン)を記述していると予想されていた。本研究では数値計算を行い、この予想を調べた。その結果、調べた物理量に関しては確かにそのような極限が存在することが分かった。この結果は予想が正しいことを強く支持している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナの影響により、研究会での発表機会は大幅に減ってしまったが、当初想定していた以上に研究成果は得られており、総じて順調に進展しているといえる。特に、行列正則化の研究については、当初考えていなかった一般化の着想を得られたのが大きな収穫だった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に得た着想をもとに、行列正則化の一般化についてさらに研究を進める予定である。また、数値計算を用いた研究では、行列模型の極限をさらに調べ、弦理論との対応関係をより詳しく調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響により各地で開催が予定されていた研究会が軒並み中止、あるいはオンラインでの開催となったため、2020年度に旅費として使用予定だった額については、次年度に使用する計画である。使用計画としては次のとおりである。2021年度にコロナの状況が改善され、対面での研究会の開催が増える場合は、次年度使用額を旅費として使用する。一方、状況が変わらず現地開催が引き続き行われない場合は、次年度使用額をオンラインでの共同研究で用いる物品(マイク・タブレットPC等)の購入に充てる。
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