本研究課題では,特に,標準模型や統一模型におけるゲージ対称性・フレーバー 対称性の自発的破れのメカニズムを,格子カイラルゲージ理論,Banks- Casher 関係式,カイラル- ランダム行列理論,ゴールドストーン-ボソンの有効理論の手法を用いて解析する. これによりカイラルゲージ理論におけるゲージ 対称性・ フレーバー対称性の実現の仕方をより深く理解し,ひいては,素粒子標準模型における SU(2)×U(1) 電弱ゲージ対称性の破れのメカニズムを解明する ことを目指す。研究期間 (3年+1年延長) における研究課題は,(1) 格子カイラルゲージ理論の数値シミュレーション法の開発,(2) フェルミオン4体以上の秩序パラメータに対する Banks- Casher関係式の一般化およびカイラル-ランダム行列理論の拡張,(3) 格子カイラルゲージ理論におけるゲージ対称性・フレーバー対称性の自発的破れの解析,である。このうち,(1)に関しては,Eichten-Preskill 模型(一般化ウィルソン項による格子カイラルゲージ理論の構成法)における相構造と臨界点について,Block Spin変換による解析が進展した。この結果により,数値解析法としてテンソルネットワーク繰り込み群を適用できる可能性が広がった。 一方,摂動的なゲージアノマリー相殺条件を満たす一般的なNon-Abelian理論に対するゲージ不変な格子構成法について引き続き研究を進めた。これらの成果は論文にまとめている段階である。(2)に関しては,フェルミオン4体以上の秩序パラメータによってフレーバー対称性の自発的破れが生じる場合の低エネルギー有効模型の構成,および,カイラル-ランダム行列理論の構成を行った。解析の結果によれば,SU(3)フレーバー対称性はSO(3)対称性に破れる可能性が強く示唆されている。 他のチャンネルの効果の有無も含め,さらに解析を進めた。
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