研究課題/領域番号 |
19K03823
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
前川 展祐 名古屋大学, 素粒子宇宙起源研究所, 准教授 (40273429)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 大統一理論 / 超対称性 / 余次元 / ゲージ結合定数の統一 / 超対称性の破れ |
研究実績の概要 |
自然な大統一理論は、対称性で許されるすべての項をO(1)係数で導入する、という自然な仮定の下で、超対称大統一理論における様々な問題を解決するという利点があるが、問題も存在する。最も大きな問題は、ニュートリノの質量を観測事実と合わせるとゲージ結合定数の統一を実現するためにO(1)係数の調整が必要になることである(問題A)。また、自然な大統一理論で超対称性を自発的に破ると、寿命の長い新レプトンが予言される等興味深いシナリオが作れるが、不自然な点が2つ存在している。一つはとても大きなU(1)電荷が必要になり、そのことが原因で現れる非現実的な真空を避けるために複数個のZ2対称性と新しい場を導入する必要があることである(問題B)。もう一つはゲージーノ質量をTeVスケールにするためにスフェルミオン質量を100TeV以上にする必要があり、そのために電弱スケールが不安定になることである(問題C)。 上記3つの問題を場が余次元の中で局所化する効果で解決することを試みた。その際に、例えば、寿命の長い新粒子の質量や寿命に対する実験や宇宙論からの制限を考慮する等、現実的なシナリオになるための条件も考慮した。まず、最も単純な状況として、すべての相互作用にブレーン場が含まれている場合を考えると、問題Bは解決できるが、問題AやCなど繰り込み群に関する問題に関しては、結論が同じになる、言い換えると、自然な大統一理論の結果はより一般的に成り立つことがわかった。ブレーン場を含まない相互作用を考慮すると、すべての問題が解決できることもわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題のメインテーマである、余次元を用いて、自然な大統一理論の問題を解決する、ということに対する理解が進んだため。ただ、一方で、余次元を考えると自由度が増えるため、様々なことが解決できるとともに、増えた自由度がその値になる理由を求めたくなってくる。その点については、かなり、高いハードルがあるように感じている。
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今後の研究の推進方策 |
余次元における局所化の効果を使うことで、自然な大統一理論において超対称性を自発的に破るシナリオにおける様々な問題を同時に解決できることがわかってきたが、一方で、余次元の局所化については、単に仮定しただけであり、そのような局所化が自然に得られるような全体像を探ることが次のテーマになりうる。 一方で、昨年NanoGravという実験が重力波の痕跡と思われるシグナルを報告しているが、そのシグナルを宇宙紐からの重力波と考えて説明できることが議論されている。そこから予想されるB-Lゲージ対称性の破れるスケールが自然な大統一理論の予言と合致することがわかってきた。実際に、自然な大統一理論で比較的安定な宇宙紐が生成されるのか、また、生成されないとしても、どのように変更すれば生成されるようになるのか、はっきりさせたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ情勢のために旅費や講師旅費が使用できなかったことが大きい。 遠隔議論やセミナーへの設備投資や通信関係の強化に使う予定である。 また、旅費が使えるような状況になったときには積極的に使っていきたい。
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