研究課題/領域番号 |
19K03824
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉田 賢市 大阪大学, 核物理研究センター, 准教授 (00567547)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ベータ崩壊 / 密度汎関数理論 / 中性子過剰核 / スピン・アイソスピン励起 |
研究実績の概要 |
1. 重い不安定核のベータ崩壊率の計算に際し,電子の波動関数が親核から受ける歪曲の効果が,これまで考えられていた以上に大きいことが分かった(2021年の成果)。今年度は,そこで無視していた反跳効果を取り込みベータ崩壊率の公式を完成させた。許容遷移及び第一禁止遷移の場合に,これまでの式を内包する形で拡張されたものであることを示した。その一方で数値計算の結果,今回の反跳効果は小さいことも示された。 2. Skyrme-typeのEDF (energy-density functional) を用いた密度汎関数計算では,pairing EDFとしてsimpleなisoscalar密度の汎函数がよく用いられる。また,pairing gapの中性子数依存性をより良く記述したり,核力を用いて計算された中性子物質に対するpairing gapとの整合性を考慮に入れたりするため,isovector密度を含むpairing EDFも提唱されている。今年度は慣性モーメントの全核種(偶偶核)計算を遂行し,pairing EDFの密度依存性と慣性モーメントの中性子数依存性を調べた。非対称度の小さい核では,従来のsimpleなものでもisovector密度を入れたものでも,計算された慣性モーメントに大きな差は無いが,非対称度が大きくなると2種類のpairing EDFを用いた計算に違いが出てくる。これは,isovector密度を含む汎函数では余剰中性子が増えると対相関が弱まるためである。また変形魔法数をもつ原子核では対相関の弱まりが強調され,変形が大きくなるためではないのに慣性モーメントが局所的に大きくなる(2+エネルギーが低下する)現象も予言された。中性子ドリップ線近傍核では,原子核の変形の大きさと2+エネルギーの対応に注意が必要なことを意味する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ベータ崩壊率計算に際して,レプトンの波動関数の不定性を評価することができた。原子核の波動関数は密度汎関数法を用いて得られるが,これで計算の入力として使う汎関数の不定性の評価に集中することができる。今年度はpairing部分の評価が進んだ。
|
今後の研究の推進方策 |
Skyrmeなどの密度汎関数計算に用いるparticle-holeチャネルの汎関数の不定性を評価する。ベータ崩壊率はQ値に繊細であることが知られている。そこでQ値と対称エネルギーとの関係に着目して分析を行う。 並行して核応答計算コードの改良を行う。これまでは振動状態のバンドヘッドのみの計算に限られていたが,振動回転バンドの記述ができるようにする。これで,非イラスト状態の物理を探究することができる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で外国出張ができなかったため。 今年度はいくつかの国際会議にて成果報告をし,またこれまでの共同研究をまとめて論文執筆作業を行う。
|