研究課題/領域番号 |
19K03832
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研究機関 | 二松學舍大學 |
研究代表者 |
岩崎 愛一 二松學舍大學, 国際政治経済学部, 教授 (90203356)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 宇宙暗黒物質 / アクシオン / 整数量子ホール効果 / 2次元電子系 |
研究実績の概要 |
高速電波バーストの起源として想定される宇宙暗黒物質アクシオンの存在を如何に観測するかの提案を行った。世界中ではここ10年以上様々なアクシオン観測方の提案があった。当研究では、半導体を用いたアクシオン探査を世界で初めて提案した。すなわち、量子ホール効果を用いるのである。特に整数量子ホール効果におけるプラトー間遷移は、アクシオンの影響を受けることに注目した。 量子ホール効果の実験では、10テスラほどの強磁場を使用する。そのため、暗黒物質アクシオンは、その磁場の影響で電磁波を発生させる。すなわち、量子ホール効果の実験では、必然的にアクシオンによる電磁波、特にマイクロ波の影響下で行われることになる。そのため、量子ホール効果には、純粋に2次元電子系の解析だけでは、理解できない現象が存在する。外からのマイクロ波の影響を考慮することで、その現象を説明しうる。 その現象はホール伝導度のプラトー間遷移幅に関するものである。磁場を変化させると、あるプラトーから隣のプラトーへ遷移するが、その遷移幅は、無限に大きな系では、ゼロになり、階段関数のような振る舞いをするはずである。しかし、アクシオンによる電磁波が存在するとそのために、遷移幅は有限になる。当研究ではこのことを確認するための実験を提案した。さらに、外部からマイクロ波を照射することによる遷移幅の変化を調べることで、アクシオンの質量を決定出来ることを示した。これは、アクシオンによるマイクロ波の存在を、外部からのマイクロ波の照射で確認する分けである。外部マイクロ波の周波数を変え、アクシオンによるマイクロ波の周波数と前後する周波数で、プラトー遷移幅に変化がみられるのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高速電波バーストが、アクシオンによるものであるとの仮説を検証するためのいくつかの提案を行ってきた。特に、太陽スピキュールからのアクシオンによる電磁波の発生とそれを観測するという提案。また、アクシオンが星を作り、そのアクシオン星と磁場の強い星との衝突で発生する電磁波の観測。具体的には、アンドロメダ銀河中の多数ある星とアクシオン星の衝突で発生する電波バーストを観測するという提案。これらは、アクシオンの存在を間接的に確かめるものである。さらに、アクシオンを直接観測するための処方を当研究では精力的に行ってきた。 まず、平行に置いた2枚の平らな金属板を用いて、その間に強磁場をかけることで、その2枚の平行金属板の間に発生するアクシオンによる電磁波を観測することを提案した。2枚の平行に置かれた金属板の間隔を調整することで、電磁波の共鳴が起こる。その共鳴を観測して、アクシオンの質量を決定するという提案をした。2枚の金属板の間隔は自由に調整することが可能であり、それまで行われてきた円筒状の金属を用いたアクシオンによる電磁波の共鳴法に比べ、観測する共鳴周波数域を大幅に広げることが可能である。 また、令和5年度は、半導体を用いたアクシオン探査法を提案した。これは、世界で初めての試みであり、さらに詳細な理論研究が求められる。半導体には量子ホール効果と呼ばれる現象が知られている。この現象に見られるある特性が、暗黒物質アクシオンによるものと解釈される。量子ホール効果は、半導体で作られた2次元電子系のもつ特性である。それは強磁場中で実現される。一方、強磁場中では、暗黒物質アクシオンが電磁波を発生する。その電磁波は弱いが、極低温では2次元電子に吸収されて量子ホール効果の特性に影響を及ぼす。このことを考慮したアクシオンの直接観測は、現在詳細な研究が進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
量子ホール効果を用いたアクシオン探査のわれわれの理論研究は、かなり詳細なものになっている。この理論研究をさらに進めると共に、その実験的提案を実行してもらうために、量子ホール効果の実験に精通している人を説得する必要がある。そのような研究者のほとんどは暗黒物質アクシオン探査に関係した研究をしていない。そのため、量子ホール効果という半導体特有の現象が、アクシオン探査に利用できることを説得し、我々の提案を実験してもらうことが、重要である。世界初で、かつ、成功すれば物理学上、宇宙科学上も大発見につながる実験研究を進める人を探すことが、緊急の課題である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ロシアのウクライナ侵攻でヨーロッパへの渡航に時間がかかるようになったこと。さらには、円安で渡航費用が予定外にかさむことになったこと。また、コロナの影響で学会、研究会等がオンラインで行われるようになったこと。また、想定以上に現在のノートPCの性能が落ちることなく、買い替える必要がなくなったこと等の影響で、予定支出が少ななった。 令和6年度では、ノートPCの買い替え、北海道での学会出張、および、京都での研究会出席を予定している。
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