研究課題/領域番号 |
19K03834
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
黒木 経秀 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40442959)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | matrix model / resurgence / instanton / random matrix theory |
研究実績の概要 |
Supersymmetric double-well matrix modelの2点関数の解析を主に行った。Nicolai mappingにより、Gaussian matrix modelの2点関数に帰着できることに着目し、Genus展開の全次数の表式を得た。しかしこのままでは積分が実行できないため、Gaussian matrix modelの連結2点関数を1点関数の積の和として表す新しい結果を得た。表式自体は非常に複雑となったが、ambiguityのleading orderを知るためならばその中の限られた情報のみ用いれば良いことに着目し、2点関数の全次数の結果に対しBorel resummationを適用し、0-instanton sectorにおけるambiguityの陽な表式を得ることに成功した。これが1-instanton のウエイトを正しく再現していることを確認した。さらにrandom matrix theoryの結果を用いることにより、1-instanton sectorにおけるambiguityも求めた。この計算の際はAiry kernelの非対角部分が主要な役割を果たしていることを見出し、また摂動的鞍点と非摂動的鞍点の周りの摂動級数の積となるという特徴的性質があることを明らかにした。不定性は非摂動的鞍点での被積分関数の値によって生じることを同定し、鞍点法によりambiguityを導出すると、弦結合定数のleadingで0-instanton sectorのambiguityを厳密に打ち消していることを発見した。これにより2点関数におけるresurgenceの成立を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Supersymmetric double-well matrix modelにおける2点関数の表式を得ることができ、さらにそれに基づきleadingでのresurgenceの成立を陽に確認することができた。同じ模型の異なる物理量に対してresurgenceを確認した例はあまりないため、この結果は非常に価値がある。また、この解析の際に、Gaussian matrix modelの2点関数を1点関数の積の和として表す新しい結果を得た。この結果により今後多点関数への拡張が期待できる。一方、2点関数の結果から、インスタントンの周りのcollective modeの解析や、超対称の破れとの関連を明らかにするなどの研究に至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
Supersymmetric double-well matrix modelの相関関数はNicolai mappingによりGaussian matrix modelの相関関数に帰着でき、さらにそれは2点関数で表される。今回導出した公式により、さらにこれが1点関数の積の和として表示できることが分かり、1点関数については全次数の結果をすでに得ているため、一般の多点関数の表式を得ることが可能になると思われる。よって一般の多点関数におけるresurgenceを確認する。また、1点関数、2点関数のambiguityを比較することにより、その周りのcollective modeの数や、対応するD-braneの次元など、instanton自体の物理的性質を解明する。また、今回解析した奇数べきの相関関数と、先行研究で扱った偶数べきの相関関数を関係付け、超対称性の破れとresurgenceの関係を研究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究初年度でパソコンを購入予定であったが、現在使用中のものがまだ高速で動いているため、新規のパソコンを買わなくても研究遂行に支障がなかった。また、共同研究者の杉野氏を訪問し、議論を重ねる予定であったが、単独研究となったことや、社会情勢等からそれを見合わせた。次年度使用額は、新しいパソコンやそれに伴う数式処理ソフト購入、また前年度の研究成果の発表のための旅費として支出する予定である。
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