超対称行列模型によって非摂動的に定義される、超称性が自発的に破れる超弦理論の初の例を研究してきた。先行研究において、この模型の1点関数の全次数の表式を得た。これに対してresurgenceのアイディアを適用し、非摂動効果を同定し、これが超対称性を破る行列模型のインスタントンそのものであることを確認する。これに基づき、インスタントンの性質を読み取ることにより、超弦理論における超対称性の自発的破れの機構を解明することが本研究の目的である。まず1点関数に関しては、摂動級数と非摂動効果両者の不定性が打ち消し合い、resurgenceが成立することを具体的計算により確認した。この際、非摂動効果は超対称性の破れを引き起こすインスタントンそのものであることを示した。特に摂動級数は、インスタントンのsubleadingの寄与まで正しく再現することを検証した。さらにこの結果を拡張し、2点関数も摂動級数の全次数の結果を得ることに成功した。この際ランダム行列理論のsoft edge scaling limitにおける2点関数の摂動展開の全次数に対する新しい公式を発見した。この公式は2点関数を1点関数に帰着させるもので非常に使いやすく、今後の汎用性が大きく期待される。この公式を用いて、2点関数においてもやはり摂動級数と非摂動効果両者の不定性が打ち消し合い、resurgenceが成立していることを具体的に示すことができた。さらにこの場合も非摂動効果は超対称性を破るインスタントンの寄与そのものであることを確認した。これらの結果から、超対称性の破れというダイナミクスとresurgence構造の直接対応が明らかになった。
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