ブラックホール時空に現れる地平面上の漸近的対称性が創発するミクロな量子的自由度の研究を行った。これまで漸近的対称性を見つけることは漸近計量テンソルのfall off条件を試行錯誤で置いて、結果が悪い場合には、また最初からやり直すという効率の悪い方法しか、知られていなかった。その条件の下で対称性の生成子の積分可能条件を確認しても、多くの場合は、積分できずに、振り出しに戻ることになっていた。今回の研究では、1つの背景計量から大域的座標変換によって生成される漸近計量テンソルの集合を考えて、それから自然なfall off条件を読みだす方法を採り入れた。またその集合において対称性の生成子の積分可能性を確かめる効率の良い手法を開発した。これまで多数回必要だった上手いfall off条件の発見に至るまでの試行錯誤を圧倒的に減らすことに成功をした。その結果super dilatationという新しい漸近的対称性がリンドラー地平面上に存在することを示した。これは地平面を通過する物体の量子情報を記憶するブラックホールの新しい自由度になる可能性があり、興味深い結果となっている。また深層学習プロトコルを伴った時空計量測定装置の研究を継続しており、まもなく第1論文を発表する予定になっている。これはブラックホール時空やリンドラー時空の漸近的対称性が生成するミクロな自由度などを直接測定できる測定の一般理論構築に繋がると期待をされる。そのことによって地平面上の自由度が、自由落下する観測者(測定機)と加速して地平面外部に留まる観測者(測定機)に対して全く異なる描像を与えることを確立することに繋がると期待をされる。
|