本研究は素粒子標準模型の諸問題を解決するためにトポロジカルソリトンに着目したユニークな研究である。対称性やトポロジーはエネルギースケールに依らない普遍的な概念であり、次元やスケールの異なる素粒子と物性を同じ視点で捉えることが可能となる。 特にトポロジカル物質のエッジモードとブレーンワールドのブレーン上に局在する0質量粒子の類似性に着目し、よく知られたフェルミオンに加え、ゲージ場やスカラー場もエッジモードと呼ぶべき0質量粒子が局在することを明らかにした。またゲージ場の局在機構とヒッグス機構が如何に矛盾なく起こるのかを明らかにし、ソリトンブレーンワールドの理論的な基礎を確立した。更に統一理論への拡張も試みた。6次元SU(5)ゲージ理論のnon-Abelian量子渦がSU(5)を標準模型ゲージ対称性SU(3)xSU(2)xU(1)に自発的に破り、かつそのゲージ場の0質量モードが量子渦上にダイナミカルに局在することを示した。 今年度はソリトン上でのSU(5)統一理論を実現をさらに推し進めるため、統一理論のヒッグス機構に関する問題(3-2分離問題)の解決を試みた。大きな成果が出始めていて、SU(5)の5表現のヒッグス場がソリトン上のエッジモードとして局在するとき、カラーヒッグスと電弱ヒッグスが自然に分離し、前者が規格化不可能な非物理的粒子になるため低エネルギー有効理論に現れない、ことを明らかにした。一方で標準模型のパラメータをどの程度再現出来るかについては一部未解明であり引き続き研究を継続し、ソリトンによるブレーンワールドと統一理論の融合をトポロジカル物質のエッジモードとして理解できることを明らかにしていく。 また関連する成果として、回転する高密度バリオン物質中のカイラルソリトン格子にnon-Abelian相を発見し、またトポロジカルソリトンの新しい量子的生成機構を発見した。
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