• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2019 年度 実施状況報告書

スケール不変性に基づく標準理論の拡張と重力波による検証可能性

研究課題

研究課題/領域番号 19K03844
研究機関富山大学

研究代表者

久保 治輔  富山大学, 理学部, 客員教授 (40211213)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードスケール不変性 / 重力波 / 素粒子の標準模型の拡張
研究実績の概要

当研究の目的は、暗黒物質を含めた素粒子の質量の起源は何かという「問い」に対するスケール不変性に基づき標準理論を拡張するという「答え」を、重力波を使って検証できないかを調べることである。素粒子の標準理論の粒子はHiggs機構によって質量を得ている。しかし、Higgs機構によって得られた質量は宇宙全体のエネルギーのわずか 0.1% にしか過ぎない。さらに、標準理論のHiggs機構は、宇宙全体のエネルギーの27%を占める暗黒物質の質量の起源を明らかにすることはできないばかりか、暗黒物質に質量を与えることもできない。
一方で、標準理論 において、Higgs場の質量項は唯一のスケール不変性破る項であり、この項がゼロの極限で標準理論は古典的にスケール不変な理論になっている。このスケール不変性を自発的に破り、同時に暗黒物質に質量を与えることができれば、宇宙の 30 %以上のエネルギーの起源を明らかにすることができる。当研究では、宇宙の熱史の中で、スケール不変性に基づく素粒子の新物理によって生成された重力波が、観測可能な背景重力波として残っていることを示すことであり、重力波の検出に携わっている研究者にとって重要な情報である。
また、プランク質量の起源を非可換ゲージ理論の非摂動効果から説明するモデルを構築し、スケール不変性が自発的に破れる際に生ずる南部-Goldstone(NG) ボゾン(dilaton)が宇宙の新インフレーションに欠かせないinlfatonの役割を果たしているかを調べ、プランク質量とinflatonの起源が同じである可能性があるかを明らかにすることも当研究の目的の一つである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1.QCDにおいて、カレントクォーク質量が小さい領域でのカイラル相転移は一次相転移になることが知られているがQCDの第一原理による重力波スペクトルの計算は存在していない。今年度は、Nambu-Jona-Lasinio模型と線形シグマ模型のQCDの有効理論の枠組みで、カレントクォーク質量をゼロとして背景重力波スペクトルを計算し、どの程度のモデル依存性があるかを調べた。Nambu-Jona-Lasinio模型については、Polyakovループ効果(閉じ込め効果)を入れた場合と入れない場合の違いも調べた。どの模型も定性的には同じような予言をするが、定量的にはかなり異なっていることが分かった。例えば、重力波のエネルギー密度やその周波数の違いは100倍にも及ぶ可能性があること見出した。一方、計算機シミュレーションを使った第一原理計算の準備がされているという報告があった。
2. プランク質量の起源を非可換ゲージ理論の非摂動効果から説明するモデルを構築した。更に、スケール不変性が自発的に破れる際に生ずる 南部-Goldstone(NG)ボゾン(dilaton)が宇宙の新インフレーションに欠かせないinlfatonの役割を果たしているかを調べ、プランク質量とinflatonの起源が同じである可能性があるかを明らかにすることができた。
以上の理由により、研究はおおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

LISAやDECIGO等の宇宙空間検出器が観測できる背景重力波の周波数帯はO(1)~ O(100)m Hzであり、また、地上の検出器LIGO, Virgo, KAGRA が観測できる周波数帯はO(1)~O(100)Hzである。
当研究ではスケール不変性に基づく素粒子の新物理由来の重力波が宇宙空間検出器から地上検出器までの周波数帯で
検出可能かを調査することなので、幾つかのスケール不変性に基づいて拡張されたモデルを考察し、それらのモデルが予言する背景重力波を詳しく調べ、研究を推進していく予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2019 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [国際共同研究] Max-Planck-Institute/University Heidelberg(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      Max-Planck-Institute/University Heidelberg
  • [国際共同研究] University of Padova(イタリア)

    • 国名
      イタリア
    • 外国機関名
      University of Padova
  • [雑誌論文] Planck mass and inflation as consequences of dynamically broken scale invariance2019

    • 著者名/発表者名
      J. Kubo, M. Lindner, K. Schmitz and M. Yamada
    • 雑誌名

      Physical Review D

      巻: 100 ページ: 015037

    • DOI

      https://doi.org/10.1103/PhysRevD.100.015037

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Physics beyond the standard model may be described by a massless QFT2019

    • 著者名/発表者名
      J. Kubo
    • 雑誌名

      Nuclear Physics B

      巻: 941 ページ: 911-917

    • DOI

      https://doi.org/10.1016/j.nuclphysb.2018.01.013

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Observational prospects for gravitational waves from hidden or dark chiral phase transitions2019

    • 著者名/発表者名
      A. Helmboldt, J. Kubo and S. van der Woude
    • 雑誌名

      Physical Review D

      巻: 5 ページ: 055025

    • DOI

      https://doi.org/10.1103/PhysRevD.100.055025

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Gravitational waves from phase transition in a hidden QCD sector2019

    • 著者名/発表者名
      M. Aoki
    • 学会等名
      Particle Astrophysics and Cosmology Including Fundamental InteraCtions
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Gravitational Waves from Phase Transition in a QCD-like hidden sector2019

    • 著者名/発表者名
      M. Aoki
    • 学会等名
      16th International Conference on Topics in Astroparticle and Underground Physics
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2021-01-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi