その起源が量子色力学の次元変性であることが知られているQCDスケールと異なり、電弱対称性の破れのスケール、つまり素粒子質量の起源はいまだ明らかになっていない。素粒子標準理論における説明はツリーレベルのヒッグスポテンシャルのパラメータ調整によるものであるが、QCDの場合とは異なり、この説明での電弱対称性の破れのスケールは古典的に禁止されておらず、巨大な量子補正を受けてしまう。したがって、電弱対称性の破れのスケールの小ささを説明するためには、パラメータの微調整が必要となる。この問題を解決するため、これまで多くの素粒子標準理論を超える物理の可能性が検討されてきた。本研究は、これらの素粒子標準理論を超える物理を個々に調べるのではなく、統一的な有効理論を構築することで、模型の詳細によらない制限を得ようとするものである。 有効理論を用いて素粒子標準理論を超える物理に含まれる新粒子を調べるには、これらの新粒子を含む有効理論を構築せねばならない。本研究では、ヒッグス有効理論を拡張し、任意個数、任意電荷、任意色荷をもつスピン0およびスピン1粒子の有効理論を構築した。さらに、これらの粒子に加えスピン1/2粒子を含む有効理論での素粒子散乱振幅の一般的表式を与えた。この研究はさらに拡張し、高階微分を含む有効理論の構築と輻射補正の構造を明らかにした。その際、電弱対称性の破れを正しく記述するよう、有効理論を非線形シグマ模型を用いて記述し、カイラルオーダーカウンティング則として、有効場の理論におけるループ展開と矛盾のない定式化を行うことで系統的な計算を可能とした。また、複合クォークや複合レプトン模型を念頭に置き、この有効理論を基づく現象論研究を展開した。
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