研究実績の概要 |
最終年度は、ニュートリノ-20Ne,18O,40Ar反応の研究と軽核の半径、エネルギー準位の特異な性質の解明を行った。 1.元素19Fの生成に重要な寄与をするニュートリノ-20Ne反応の粒子放出を伴う種々の分岐への反応断面積を、殻模型、ハウザー・フェシュバッハ統計模型によって評価した。 2.ニュートリノ-18Oでは16Oの場合と異なり、ガモフ・テラー遷移が重要な寄与を行う。反応断面積を殻模型で評価し、18O ->18Fの電荷交換反応では、0.2%の同位体含有率にもかかわらずwater Cherenkov検出器による超新星ニュートリノ検出では無視できない寄与があることを示した。 3.ニュートリノ-40Ar反応の断面積を、sd-pf-二主殻で構築された新しい有効相互作用によって殻模型で評価した。中性カレント反応断面積の原子核中での軸性ベクトル結合定数の減少効果に対する依存性を調べた。 研究期間全体を通じ、天体環境下での弱遷移率、すなわち電子捕獲率およびβ崩壊率のより正確な評価を、ガモフ・テラー遷移だけでなく第一、第二禁止遷移も含めて行い、sd-pf, pf-sdg 殻のような二主殻が関与する核領域にも対象を拡張して系統的に行い、天体での元素合成過程や核Urca過程、星の進化に重要な精密な弱遷移率の蓄積を行うことができた。これらの弱遷移率は星での元素合成、星の冷却・加熱、星の進化の最終過程の研究に適用された。また、二主殻にわたる核内有効相互作用を基本的核力から新たな方法で導き出し、中性子過剰核の研究に応用した。フッ素、ネオン、ナトリウム、マグネシウム同位体では、中性子ドリップ線の決定に、モノポール成分以外の核力成分、四重極成分、が重要な役割を果たしていることを明らかにし、これまで発見された中で最も重い二中性子ハロー核29Fの構造の解明を行った。
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