本研究では、新たな情報をもたらすと期待される連星系以外の新しい重力波源の1つとして注目されている階層的三体系の力学およびその系から放出される重力波について解析を行い、その観測可能性を明らかにした。またその系における相対論的効果の影響についても詳細に考察した。階層的三体系の力学においてはvon Zeipel-Lidov-Kozai(vZLK)機構が重要な役割をする。本研究の前半(2019-21年度)では、ポストニュートン近似を仮定し、このvZLK機構が顕著に表れる状況において、重力波の間接観測および直接観測の2つの新しい可能性を指摘した。内連星にパルサーを含む場合、vZLK機構により内連星の離心率が大きくなると重力波放出が増大し、その結果として重力波放出による近星点移動の累積変化曲線に曲がりが生ずる。その累積変化は重力波の間接観測となるが、その曲線に曲がりを発見できれば階層三体系であることの証拠を与える。また直接観測としては、内連星の離心率の変動に伴い、離心率が大きくなったときにLISA等で観測可能となる。観測される重力波の周波数や強度は周期的に変化するため、次の観測可能な時期が予想できる利点がある。 一方、ダークエネルギーを説明する修正重力理論に関しては、いくつかの有望なモデルを解析した。 最終年度を含む本研究の後半(2022-23年度)には,銀河中心に存在する超巨大ブラックホールまわりの連星系のダイナミクスを解析した。このような系はより現実的な三体系を与え,今後の観測に重要になる。超巨大ブラックホールは背景時空として与え,そのまわりの連星系は局所慣性系を設定し,ニュートン近似により取り扱う。連星が十分コンパクトな場合には安定なvZLK振動が起こり,上記の興味深い現象が期待される。連星の結合が緩くなるにつれ、振動にカオス的振る舞いが現れ、観測において新しい重要な要素となる。
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