研究課題/領域番号 |
19K03860
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
瀬戸 治 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (40547741)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 右巻きニュートリノ / 宇宙の物質反物質非対称性生成 |
研究実績の概要 |
本研究計画では、初期宇宙で起こった右巻きニュートリノに質量を生成する真空の相転移により生成される重力波観測を通じて重い右巻きニュートリノの質量起源となる高エネルギー領域でのニュートリノの相互作用に迫る。 ニュートリノ質量生成機構には右巻きニュートリノと並んで、もう一つの有望な機構として、電弱三重項のヒッグス場を導入する模型がある。バリオン数とレプトン数の差(B-L)をゲージ理論に電弱三重項のヒッグス場を導入した模型の最小模型を構築した。量子異常の無い理論を構成する右巻きニュートリノのB-L 荷の取り方は、数学的には2つあり、B-L 荷を3世代全ての右巻きニュートリノ共通にとるスタンダードと、B-L 荷が世代毎に異なるオルタナティブがある。オルタナティブの場合、このB-L 荷の世代不一致のため、従来の右巻きニュートリノによるシーソー機構が機能しない。先行研究で繰り込み不可能な相互作用を持ち込むことで回避する模型が提案されていたが、我々は、最小の新粒子のみを導入し繰り込み可能な模型を構築することに成功した。この模型は、暗黒物質の候補を付加的な離散対称性を課すことなしに説明出来るという魅力を持つ。 右巻きニュートリノが重要な役割と果す物理過程に、宇宙の物質反物質非対称性の起源のレプトジェネシス機構による説明がある。この研究に、着手した。重力波で右巻きニュートリノの効果が観測できるようなテラ電子ボルトやペタ電子ボルトの質量の右巻きニュートリノで観測されている軽いニュートリノ質量を説明する模型の一群に、量子補正によりニュートリノ質量を生成するものがある。これらの模型における、レプトジェネシス機構を成否を検討する研究に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニュートリノ質量生成機構には右巻きニュートリノの並んで有望な機構として、電弱三重項のヒッグス場を導入する模型について、電弱三重項のヒッグス場を導入する積極的な理由がバリオン数とレプトン数の差(B-L)の電荷を世代ごとに異なる右巻きニュートリノを持つ場合にはあることを示し、その現象論的および宇宙論的帰結と示せたため。
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今後の研究の推進方策 |
右巻きニュートリノの質量が、本研究で注目している中間スケールよりもずっと低い場合、素朴なシーソー機構の模型ではニュートリノ質量が大きくなりすぎる。これを回避する方法の一つとして、ニュートリノ質量を量子補正で生成する機構があるが、この場合には、生成された非対称性が消えてしまう効果が顕著になり得る。このことを定量的に評価し、宇宙の物質反物質非対称生成が可能なパラメーター領域を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加を予定していた国際会議と学内の重要な行事が重なり、その国際会議に出席できなくなったため、未使用額が生じた。本年度の国際会議の旅費等に充てる予定。
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