本研究計画では、初期宇宙で起こった右巻きニュートリノに質量を生成する真空の相転移により生成される重力波観測を通じて重い右巻きニュートリノの質量起源となる高エネルギー領域でのニュートリノの相互作用に迫る。 これまでの研究において、右巻きニュートリノ質量生成を引き起こす相転移により生成される重力波が観測できるような相転移のスケールは、電弱スケールからペタ電子ボルトであり、質量を生成する湯川結合の効果はスペクトルに現れることを見出した。これら重い右巻きニュートリノが重要な役割と果す物理過程に、宇宙の物質反物質非対称性の起源のレプトジェネシス機構による説明がある。重力波で右巻きニュートリノの効果が観測できるようなテラ電子ボルトやペタ電子ボルトの質量の右巻きニュートリノで観測されている軽いニュートリノ質量を説明する模型の一群に、量子補正によりニュートリノ質量を生成するものがある。このうち Krauss らによって提唱された模型では、ニュートリノ質量を量子補正によって生成する過程において重要な役割を果たす右巻きニュートリノの一つが暗黒物質になるという魅力的な性質を持つ。一方で、素朴には、ここに現れる右巻きニュートリノによってレプトジェネシスを機能させるのは困難であった。しかし、我々は詳細に検討し、右巻きニュートリノの世代数を4つに増やすというわずかな拡張によって、高々数百 GeV 程度の質量の右巻きニュートリノによって宇宙の物質反物質非対称性が説明できることを示した。興味深いことに、この模型での右巻きニュートリノの質量が数百 GeV と軽いので、将来の加速器実験において検証可能である。
|