研究実績の概要 |
2022年度は拡がりを持つ演算子(欠損演算子)の存在する共形場理論の定性的性質の研究、および量子誤り訂正符号から構成出来る二次元共形場理論の研究を行った。
大阪大学の嶋守氏、東京大学の奥山氏との共著Phys. Rev. D 106, no.8, L081701 (2022)では電磁気学における鏡像法のように、欠損演算子入りの共形場理論における相関関数が、通常の共形場理論の相関関数として常に書き表せることを示した。また同氏らとの別の共著 JHEP 03, 051 (2023), JHEP 03, 203 (2023)では 4-epsilon 次元における O(N) ベクトル模型において境界および線演算子という欠損が存在する場合を調べ、これらの理論における点演算子の共形次元が3つの物理的に自然な公理系のみを用いて導出した。またこの手法で得られた点演算子の共形次元に対する結果が摂動論を用いて得られたものと一致することを示した。
東京大学の川畑氏と奥田氏との共著arXiv:2212.07089 [hep-th](SciPost Physics Core に受理済)では非二進数上の量子誤り訂正符号から二次元共形場理論を構成する具体的な手法を与えた。この構成法では量子誤り訂正符号を古典誤り訂正符号に対応付けを行い、それを高次元格子に拡張したのち、格子上のベクトルに対して共形場理論の頂点演算子を対応させる。この構成法を CSS 符号と呼ばれるクラスに適用し、対応する共形場理論のアンサンブル平均を調べることでそのホログラフィック双対な重力理論としての解釈を議論した。
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