研究実績の概要 |
量子情報分野において、量子誤り訂正符号はエラー耐性のある量子コンピュータ開発に必要不可欠な理論である。最近、量子誤り訂正符号は量子情報のみならず、理論物理学の様々な分野でも重要な役割を果たすことが分かってきた。
2023年度の研究では、量子誤り訂正符号の素粒子論への応用として、誤り訂正符号から二次元の共形場理論を構成する新たな方法を提唱した [SciPost Phys. Core 6 (2023), 035, JHEP 12 (2023), 127]。このように構成された共形場理論はボソン的な演算子しか含まないが、理論に存在する Z_2 対称性を用いることで量子誤り訂正符号からフェルミオンを含む共形場理論の系統的な構成法を提唱した。さらに、この手法で構成されたフェルミオンを含む共形場理論の中で、超対称性を持つ新たな共形場理論を発見した [Phys. Rev. D 108 (2023) no.8, L081901]。
量子情報量の一つであるエンタングルメントエントロピーは、場の量子論の持つエンタングルメント構造を調べる基本的な指標であるが、これまでの研究では二次元共形場理論や自由場のような簡単な場合でしか厳密な結果が得られていなかった。相互作用する場の量子論のエンタングルメント構造の非摂動論的性質を調べるため、質量のない相互作用する二次元フェルミオンを記述する Thirring 模型において、ボソン/フェルミオン双対性を用いることで、二つの領域の間の二次の Renyi エントロピーの厳密解を得た [Phys. Rev. D 108 (2023) no.12, 125016]。
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