研究課題/領域番号 |
19K03870
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
瀬戸 直樹 京都大学, 理学研究科, 助教 (80462191)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 重力波 / LISA |
研究実績の概要 |
重力波イベントGW170817検出の結果、低赤方偏移での連星中性子星の合体レートの推定が可能になった。Seto (2019)ではM31、LMC等の近傍の銀河の光度関数を利用して、これらの銀河における連星中性子星の合体率を見積もった。次に宇宙干渉計LISAで計画されている感度曲線を用いて、検出可能な連星中性子星の総数を各々の銀河に対して算出した。ここでは、対象連星の周波数分布、および分解不可能な重力波前景放射の観測時間依存性が重要なポイントとなる。 解析の結果、LISAが予定通りの感度で5年程度稼働した場合、 LMC、M31でそれぞれ5個程度の連星中性子星が検出できる可能性があることが分かった。また、観測期間を5年以上に伸ばした場合、M 31の方が期待値の増加率が大きいことを示した。 関連してLISAで中性子星を検出することにより、近傍銀河まで距離をどの程度の精度で推定できるかを見積もった。 多体系の重力波源の研究としては、二つの AMCVn型星(質量輸送のある連星白色矮星)によって構成される階層的4体系の相互作用を調べた。これはSeto((2018)を発展させた研究であり、2つの軌道周波数の差が小さい状況を引き続いて取り扱った。連星間距離を短くして、力学的な結合を大きくすると、従来の同期捕獲以外に、軌道周波数がほぼ一定のずれに留まるリミットサイクルが新たに出現することが明らかになった。これには、 連星内の質量輸送が自己制御的であり、外部から加えられたトルクに対して、角速度の応答を緩やかにすることが効いている。この周波数のずれによって、それぞれの連星が放出する重力波にうなりが発生して、重力波振幅が大きく時間変動する。うなりの周期はモデルパラメータによっては、1から10年程度になり、LISAによって、振幅が大きく変動する重力波が検出される可能性があることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多体系の重力波源の進化に関して予想外の結果を得るなど、大きな進展があったため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続いて、多体系の重力波源の進化を解析するとともに、マルチメッセンジャー天文学の側面も検討を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス蔓延に伴う、出張を取りやめに起因する。状況を注意深く検討して、本年度後半以降の国際会議等で成果を報告する。
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