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2022 年度 実施状況報告書

拡張されたブラックホールで探るゲージ理論の新しい相構造

研究課題

研究課題/領域番号 19K03871
研究機関立教大学

研究代表者

石井 貴昭  立教大学, 理学部, 助教 (70837666)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2024-03-31
キーワードブラックホール / ゲージ重力対応 / AdS/CFT対応
研究実績の概要

AdS時空に外部から摂動を一般的に与えたとき、超放射現象によってブラックホールからエネルギーをどれだけ引き抜けるかについての論文を発表した。超放射条件を満たす摂動を外部から与えたとき、ブラックホールの電荷や角運動量がエネルギーに転化されて、注入した摂動以上のエネルギーを取り出せることを定量的に評価した。
AdS時空における荷電ブラックホールついて、Robin境界条件と呼ばれる一般的な境界条件を満たす荷電スカラー場を導入した場合に得られるhairyブラックホール解に関する研究をおこない、成果を公表した。Robin境界条件をコントロールするパラメータを変数として含めたときの相構造について、異なる解の間の相転移を詳しく議論した。
AdS時空での研究の応用として、漸近平坦な回転ブラックストリング時空における超放射不安定性に関する研究をおこない、結果を論文で発表した。先行研究で、5次元以下のブラックストリングについて不安定性が起こることが議論されていたが、より高次元に関しては否定的な結果がいくつか知られていただけだったのに対して、本研究では6次元ブラックストリングにおいて超放射不安定性を発見した。
さらに、この不安定性によってブラックストリングが変形されることで得られる、新しいブラックストリング解を2種類構成し、それぞれ論文として発表した。これらの解は異なる対称性により特徴づけられる。一つは非定常ブラックホール解になっており、ブラックレゾネーターストリングと名付けられた。もう一つは、先行研究において低次元で構成されていた螺旋ブラックストリングと呼ばれる定常解を6次元において構成したものになっていた。これらについて、ブラックホールエントロピーなどの熱力学量や、極限的な振る舞いなどを詳細に解析した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、前年度に開始して最終段階のデータ解析と論文執筆が年度を跨いでいた複数の研究については、それらの細部を仕上げて論文にまとめ上げる作業をおこなった。その段階において、解に関する新しい発見や副産物的な公式の導出などもおこない、前年度に準備されていたものに、同等に新しい結果を加えてより完成度の高い論文として完成させる運びになった。また、本年度に新たに開始した研究についても結果を論文として発表した。この過程において新しく種として創発したアイデアについて試験的な計算もおこない、いくつかの先行的な結果を得ている。

今後の研究の推進方策

今後は、本年度の研究を進めている中で得られたアイデアを進展させる研究を予定している。本年度の研究において、漸近AdS時空以外での超放射不安定性での特徴に関する理解が得られたので、それを超重力理論の模型などに応用することなどを考えている。回転ブラックホールには可能な対称性に関する数理的な定理がいくつか知られており、その定理において数理的に主張される最低限の対称性を持つ解を具体的に実現すること、などを期待している。また、AdS時空でのブラックホールの解析において副産物的な関係式が本年度の研究で得られたので、その関係式を掘り下げた考察をおこなうことを予定している。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染症の感染拡大に影響され、国内外会議への現地出席および共同研究者を訪れての直接議論が制限されていた。次年度にはそれらの活動への制限が無くなる見込みであり、経費は主に旅費として使用する。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)

  • [国際共同研究] University of Cambridge/University of Southampton(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      University of Cambridge/University of Southampton
  • [国際共同研究] University of Barcelona(スペイン)

    • 国名
      スペイン
    • 外国機関名
      University of Barcelona
  • [雑誌論文] Gregory-Laflamme encounters Superradiance2023

    • 著者名/発表者名
      Dias Oscar J. C.、Ishii Takaaki、Murata Keiju、Santos Jorge E.、Way Benson
    • 雑誌名

      Journal of High Energy Physics

      巻: 2023 ページ: -

    • DOI

      10.1007/JHEP01(2023)147

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Gregory-Laflamme and superradiance encounter black resonator strings2023

    • 著者名/発表者名
      Dias Oscar J. C.、Ishii Takaaki、Murata Keiju、Santos Jorge E.、Way Benson
    • 雑誌名

      Journal of High Energy Physics

      巻: 2023 ページ: -

    • DOI

      10.1007/JHEP02(2023)069

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Energy extraction from AdS black holes via superradiance2022

    • 著者名/発表者名
      Ishii Takaaki、Kaku Youka、Murata Keiju
    • 雑誌名

      Journal of High Energy Physics

      巻: 2022 ページ: -

    • DOI

      10.1007/JHEP10(2022)024

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 回転ブラックストリングの超放射不安定性について2023

    • 著者名/発表者名
      石井貴昭
    • 学会等名
      第6回ブラックホール研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] Hairy AdS black holes with Robin boundary conditions2023

    • 著者名/発表者名
      Takaaki Ishii
    • 学会等名
      6th INTERNATIONAL CONFERENCE on HOLOGRAPHY, STRING THEORY and DISCRETE APPROACH in DANANG, VIETNAM
    • 国際学会
  • [学会発表] Hairy black hole in AdS and double trace deformation2022

    • 著者名/発表者名
      石井貴昭
    • 学会等名
      日本物理学会2022年秋季大会
  • [学会発表] Robin 境界条件を持つAdSブラックホールと double trace 変形2022

    • 著者名/発表者名
      石井貴昭
    • 学会等名
      立教大学理論物理学研究会
  • [学会発表] Superradiance, black resonator strings and helical black strings2022

    • 著者名/発表者名
      石井貴昭
    • 学会等名
      第23回「特異点と時空、および関連する物理」研究会
  • [学会発表] Superradiance, black resonator strings and helical black strings2022

    • 著者名/発表者名
      Takaaki Ishii
    • 学会等名
      2022 NTU-Kyoto high energy physics workshop/Kawai Fest
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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